横浜を最後まで追い詰めた 横浜隼人“主将”が夏の敗戦から踏み出した一歩
横浜隼人の水谷監督が「監督」と呼んでいた正捕手・前嶋藍主将
今夏の第104回全国高校野球神奈川大会5回戦で、横浜隼人はのちに優勝を果たす横浜に対して、延長10回に及ぶ熱戦を繰り広げた。9回裏に2-2に追いつき、なおも1死満塁と、サヨナラの絶好のチャンスを迎えたが、あと一本が出ず。横浜の粘りの前に、2-3で屈した。
横浜の校歌を聴きながら、キャプテン・捕手・3番打者としてチームを引っ張ってきた前嶋藍(まえじま・らん)(3年)は、肩を震わせ泣いていた。応援席に挨拶に向かったあと、三塁側ベンチに戻ると、水谷哲也監督から右手を差し出され、泣きながら握手を交わした。
試合後、水谷監督は「最後の最後まで粘り強く戦ってくれて、頼もしく思いました」と語ったあと、前嶋の話になると、目が潤み、言葉に詰まった。
「うちは、前嶋のチームですから。“前嶋監督”でやってくれました」
ベンチでの握手には、どんな想いを込めたのか。
「勝たせてあげたかったなと……。前嶋には、本当に申し訳なかったと思います。グラウンドに一番早く出てきて、選手たちに指示を出して、怒るときにはしっかりと怒ってくれる。私の代わりに、本当にいろんなことをやってくれました。それだけに、勝たせてあげたかった……」
新チームが始動したときから、「このチームは前嶋が監督ですから」と言い続けていた。それだけの信頼と期待を寄せられる選手は、そうそう出てくるものではないだろう。