投球で肩・肘にかかる負荷を数値化すると? 疲労をモニタリングする方法

自覚的な運動強度から怪我の予測が可能? 大谷翔平が使う機器も有効

 最も簡便なモニタリングは選手に0~10の11段階で運動強度を入力してもらう方法です。この方法をRPE(自覚的運動強度)と言います。このRPEと練習時間を使うことでACWR(acute : chronic workload ratio)という数値を算出します。この数値は「3~7日間の運動強度の平均値」を「3~6週間の運動強度の平均値」で割ることで算出されます。この数字が0.8を下回る、もしくは1.3を上回ると怪我をしやすくなると言われています(※1)。0.8~1.3の間であれば怪我をしにくいということになります。

 この方法は選手の回答に依存するため、精度については選手の協力が必要ですが、お金をかけずに把握できる優れた方法です。(※古島医師が監修する「スポメド」は疲労度と練習時間を入力するだけでACWRを計算して、0.8以下もしくは1.3以上で通知をする仕組みになっています)

 もう一つは機器を使用して負荷量を算出する方法です。最近では慣性計測装置が普及しています。「PULSE THROW」という機器をご存知の方も多いかもしれませんが、6.9g(グラム)のセンサーで肩・肘の負担を計測することができます。また、肘に蓄積している負担を可視化することも可能であり、推奨する負荷量を提示してくれます。エンゼルスの大谷翔平投手が肘のコンディショニングに使用していることでも有名ですね。

 今回は疲労と怪我の関係性を紹介しました。疲労をしていない状態が良いということではなく、適切な運動強度による疲労は必要ということでした。このモニタリングは選手が回答するだけで簡単に測定することができます。チームのコンディショニング管理として導入してみてはいかがでしょうか。

▼参考文献
※1 Gabbett TJ. The training-injury prevention paradox: should athletes be training smarter and harder? Br J Sports Med. 2016, 50(5):273-80.
※2 Dowling B et al. A Review of Workload-Monitoring Considerations for Baseball Pitchers. J Athl Train. 2020, 55(9):911-917.

◯古島医師が監修する肩・肘の故障予防アプリ「スポメド」のダウンロードはこちらから
https://info.spomed.net/

(Full-Count編集部)

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