神奈川屈指の右腕がポーカーフェイスを崩した日 涙を流して感謝を表した“恩人”

「大学で即戦力になれるように準備していきたい」

 昨秋の大会後には右肩を痛めたことがあったが、吉田さんが提案したリハビリメニューを黙々とこなし、春の好投につなげた。

「負けたことによる悔しさは当然あると思いますが、すぐに大学野球に目を向けて、トレーニングができる選手です。先日、グラウンドに行った時も、ひとりで黙々とトレーニングをしている針谷の姿がありました。まだまだ伸びしろを持っている選手なので、将来的にはプロ野球選手を目指して、頑張ってほしいと思っています」

 現状の課題は、肩甲骨周りの前鋸筋の弱さにあるという。ここが弱いために、トップからリリースに向かう動きでブレが生まれやすい。チューブを使ったトレーニングで、地道に強化を図っている。

 針谷は、次のステージに向けて、「藤川球児さんのような、バッターが狙っていても打たれないストレートを磨きたい。大学で即戦力になれるように準備していきたいです」と目標を口にする。

 お世話になった吉田さんに恩返しをするためにも、大学入学までの残り半年、トレーニングに愚直に取り組む。

(大利実 / Minoru Ohtoshi)

○著者プロフィール
大利実(おおとし・みのる)1977年生まれ、神奈川県出身。大学卒業後、スポーツライターの事務所を経て、フリーライターに。中学・高校野球を中心にしたアマチュア野球の取材が主。著書に『高校野球継投論』(竹書房)、企画・構成に『コントロールの極意』(吉見一起著/竹書房)、『導く力-自走する集団作り-』(高松商・長尾健司著/竹書房)など。近著に『高校野球激戦区 神奈川から頂点狙う監督たち』(カンゼン)がある。

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