少年野球指導歴50年、教え子1200人 ノックを打ち続ける82歳の「おばちゃん」

子どもたちにノックを打つ「山田西リトルウルフ」を率いる棚原安子さん【写真提供:山田西リトルウルフ】
子どもたちにノックを打つ「山田西リトルウルフ」を率いる棚原安子さん【写真提供:山田西リトルウルフ】

OBにオリ・T-岡田、山田西リトルウルフの棚原安子さんは82歳で“現役”

 役職は「おばちゃん」。オリックス・T-岡田外野手を輩出した少年軟式野球チーム「山田西リトルウルフ」(大阪・吹田市)を率いる棚原安子さんは82歳になった今も、子どもたちにノックを打っている。監督やコーチといった肩書を嫌うのは「野球チームの枠を超えて、人として成長させたい」という思いがあるからだ。

「今の時代、他人に教わることはNGでしょ。昔は近所のおっちゃん、おばちゃんに教わったり、怒られたりした。本来、子どもは地域で育てるものだと思うんです。近所のおばちゃんでありたいんです」

 グラウンドにノックを打つ女性の声が響く。山田西リトルウルフを指揮する棚原さんは現在82歳。子どもたちの指導を始めてから50年が経った。中学から実業団までソフトボールをしていた棚原さんは、息子が野球に関心を持ったことをきっかけに、近所の子どもたち10人ほどに野球を教えるようになったという。

 当時から大切にしている指導方針がある。「人としての成長」。棚原さんは、野球の技術向上よりも人間形成に重きを置いた。礼儀や挨拶に始まり、箸の持ち方など指導はグラウンド外にも及ぶ。洗濯や食器洗いといった身の回りのことは、子どもたち自身でやるように徹底している。こうした考え方が共感を呼んだ。最も多い時は選手が240人にまで増え、現在も140人以上が在籍している。

役職は“おばちゃん”「権力を行使しようとしたらダメになる」

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