「野球を教える」から「野球で教える」に転換 日本一達成した田舎の少年野球チーム

「マクドナルド・トーナメント」で初優勝を飾った中条ブルーインパルス【写真:小林靖】
「マクドナルド・トーナメント」で初優勝を飾った中条ブルーインパルス【写真:小林靖】

数々の失敗を反省「いきなり今のチームができたわけではない」

 中条ブルーインパルスは1984年に発足した。活動拠点は石川県中部に位置する津幡町。ヤクルト・奥川が生まれ育ったかほく市と隣接する人口3万7000人ほどの町だ。尾崎代表は1993年からチームの監督を務め、2010年に現在の倉知幸生監督に指揮官を引き継いで代表に就いた。マクドナルド・トーナメントの出場は、今回が3回目だった。尾崎代表は「色んな失敗を重ねてきたチームです。いきなり今のチームができたわけではありません」と回想する。

 スパルタや勝利至上主義が当たり前だった時代、監督だった尾崎代表も負けたら終わりのトーナメントを勝ち上がるために、勝利に固執していた時期があった。監督は絶対的な存在で、監督の考え方を体現するのが選手。有無を言う隙がない主従関係があった。当時の苦い記憶を振り返る。

「大人が勝ちを意識しすぎるために、『あのミスが痛かった』『あの場面で、打っていれば』と言ってはいけない言葉を口にしてしまいました。人間は弱いので、誰かの責任にすれば自分が逃れられます。責任を子どもに背負わせたら、絶対にいけないんです。子どもの心には傷しか残りません。大きな後悔で反省すべき点です」

 行きすぎた勝利至上主義は、子どもから野球の楽しさや笑顔を奪っていった。勝利を優先するあまり、練習内容や子どもに対する言葉は厳しくなり、大会ではエースに連投させた。思い通りに選手が動けないと、怒りや不満を爆発させる時もあったという。

「野球はサインで動く競技で、そのプレーに選手の意思は反映されません。例えば、スクイズのサインを出して選手が失敗した場合、選手の特性を一番理解してサインを決めた指導者に責任があるわけです」

平日の練習は1時間、選手が「なぜ」を考える指導方針

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