「チームはスターを育てる場ではない」 競争意識を促して日本一になった少年野球チーム
高校野球名将の方針「レギュラーを特別扱いしない」を踏襲
チーム内競争を活発にする上で重要なのが実戦の場だ。中条ブルーインパルスでは、土日祝日を主に練習試合と公式戦にしている。交代しながら、できるだけ多くの選手に試合経験を積ませる。出場機会はモチベーションとなり、自分がチーム内でどのくらいの位置にいるのか客観的に把握する材料にもなる。
「いつもコーチャーやバットボーイでチャンスが与えられない選手は、野球そのものが面白くなくなります。あきらめの気持ちを持たせてはいけないんです。報徳学園を率いて甲子園で優勝し、今は日大三島を指揮している永田裕治監督の『レギュラーを特別扱いしない』という方針は、その通りだと思います。チームはスター選手を育てる場ではありません」
実戦を多くしているのは、別の狙いもある。チームが「目から入った情報を、いかに早く手足に伝えるか」をテーマにしているためだ。「大人は状況判断という言葉を使いますが、子どもには難しくて理解できません。練習でも培うのも大変なので、試合で経験するのが一番です。同じセカンドゴロでも点差やアウトカウントで選ぶプレーは変わります」。
中条ブルーインパルスではどんな場面でも、守備ではアウトを確実に1つ取る意識を徹底している。その上で、状況に応じて少し無理をしても勝負するプレーなどができるように、試合で経験を積んで引き出しを増やしている。「セカンドを守っていて一、二塁間のゴロが飛んできた時、一塁や二塁でアウトを取るにはどんな体勢で捕球、送球するのがベストなのか、実際に走者がいると理解しやすくなります。試合をイメージして練習するのは子どもたちにとって簡単ではないので、実戦で野球勘を磨いています」。
体が大きい選手や技術が高い選手を集めなくても、度を越した厳しい練習をしなくても、中条ブルーインパルスは全国優勝を成し遂げた。強さの秘密には、選手の能力を最大限に引き出す指導があった。
(間淳 / Jun Aida)
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