「楽しかったな」と思える野球教室を… 松井秀喜氏が故郷・石川で育む“人との繋がり”
中には現役時代をリアルタイムで見ていない子も…
投げるボールが子どもたちの力に合わせて、強弱をつけていた。いい当たりをする子がいれば親指を立てて「ナイスバッティング!」と声をかけた。ちょっとタイミングが合わなかった子には「ボール、速い?」とゆっくり投げることを提案するなど、寄り添う姿勢が何度も見られた。
中には現役時代をリアルタイムで見ていない子もいる。球場外で見学していた保護者の方が興奮していただろう。ただ、松井さんにとってはそんなことは関係ない。野球を楽しんでもらいたいという気持ちとボールを投げ込んでいた。
「野球が(より)好きになってほしいですね。自分なりに目標、夢を持っていてほしいなということが一番です。そういう思いが子どもたちに広がっていってくれればいい。(野球をする子が増える)活動の一環になればいいと思います」
このように野球人口の底辺拡大を願うが、自分自身の活動がそこに直接的に繋がるとは思ってはいない。「こういう活動をしていますが、そこへの影響力は本当に微々たるものです」と控えめに言った。大切したいのは「縁」だと言う。この場所で出会えた縁が、道が開ける、続けていくきっかけになることを願っている。
かつて、現役時代に帰省した際のイベントでのこと。松井さんから声をかけられたことをきっかけに星稜高に進学したり、甲子園に出場することにつながった子もいた。質問コーナーなどで見せた優しい眼差しは、子どもたちの未来を見ていた目だったのかもしれない。