球史で最も無情な時間 「なぜ守らないと…」“10・19”の裏にあった猛者たちの涙

優勝の望みがなくなった10回裏の守備「優勝が終わったのに試合は終わっていない」

 球場のボルテージは最高潮に達した。先頭のブライアントが放ったゴロを二塁手の西村が一塁へ悪送球し(記録は投手の失策)無死一塁。運も味方し“優勝”の2文字が見えかけたが、続くオグリビーが三振、さらに羽田が二ゴロ併殺に倒れ万事休す。無情にも近鉄の攻撃は終了した。

 この時点で試合時間は3時間57分を経過していた。残り3分でロッテの攻撃を終わらせることは現実的には不可能だ。切り込み隊長の大石が「まだ、3分あるじゃないか!」と発した言葉がベンチに響き渡る。だが、近鉄ナインの誰もが“終戦”を理解していた。

「勝負は終わっているのに、なぜ守らないといけないのか。優勝が終わったのに、試合は終わっていない。私もぼうぜんとセンターの守備に向かったが、投げる投手の心理状態はどうだったのか。投げなきゃいけない人がつらかったのでないか。そんな思いが頭の中にありました」

 10回裏。ロッテの攻撃は無得点に終わり、試合は同点のまま引き分け。午後3時から始まった足掛け2試合、計7時間33分の死闘は終わりを告げた。

翌年は近鉄が9年ぶり3度目のリーグ優勝を果たす

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