新境地に到達したダルビッシュ “終戦後”の「まだまだってところ」が意味するもの

「エンジンという部分ではちょっと持たなかった」

 日増しに饒舌さを増していき、こうも言った。

「自動車に例えるなら、軽自動車が高速道でアクセル全開で100キロ以上の走行を続ければ、エンジンに負担がかかりダメージは大きい。それが、フェラーリがアクセル抑え目で100キロ走行を続けても、エンジン機関への負荷はほとんどかからない」

 強い日差しが照り付けるアリゾナのキャンプ地で、筋力トレーニングに励み肉体改造に取り組んだ。復帰した2017年のシーズンからは球速も球威も増した。が、あの頃の思いを完全に頭の中から切り離したわけではない。ダルビッシュは、今後の目標を匂わせるように言葉を紡いだ。

「今シーズンはより試合で結果を出すというところで、いろいろトレーニングであったりとか、犠牲にする部分も結構あった。その分、エンジンという部分ではちょっと(身が)持たなかったというところは正直あるので。まだまだってところですね」

 今プレーオフ4登板を含め、今季に投げたのは3357球――。滋味あふれる“ピッチング”を賞味するダルビッシュ有のメジャー10年目のオフは、能力の余白を埋めるためのオンの始まりでもある。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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