星野監督にバケツ持って立たされた左腕 苦悩からMVPまで見届けたスカウトの感慨

担当スカウトから投手コーチへ…野口を励まし続けた日々

 しかし、野口はプロに入って壁にぶち当たった。得意のカーブが投げられなくなり、制球も悪くなった。星野第2次政権が始まった1995年オフ、早川氏は1軍投手コーチに就任。闘将からは「野口を何とかしろ、おまえが獲ってきたんだろ」と指令を出された。フォームの問題点などを修正していったが「星野さんは野口に厳しかったですね。キャンプの紅白戦で2つ四球を出したら交代。バケツを持たされて、立たされたり……」。

 ほかにも頭を丸めろといわれて、スキンヘッドにしたこともあったが、その都度、早川氏は「期待の裏返しだから」と野口を励まし続けた。実際、闘将は怒った分、チャンスをくれた。そんな日々が糧となり、調子を取り戻し、成長していった。1996年8月11日の巨人戦(東京ドーム)では、プロ初完封勝利をノーヒットノーランで飾った。「自分が獲ってきた選手と同じユニホームを着て、ベンチにいて、その偉業を一緒に喜べたことが一番の思い出。そういうケースってあまりないと思うから」と早川氏はしみじみという。

 野口は星野中日が優勝した1999年にはセ・リーグMVPにも輝いた。早川氏にとってはまさに自慢の選手だが、もちろん、まだほかにも……。入団のときに一生懸命“好感度アップ作戦”を考えた、あの選手も、とても印象深いという。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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