2人に1人が肩肘の痛み自覚 “硬さ”放っておくと怪我の懸念も…効果的な予防法は?
肩・肘の怪我を予防するための運動プログラム
肘内側側副靱帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)の権威である慶友整形外科病院スポーツ医学センター長の古島弘三医師は、野球上達への“近道”は「怪我をしないこと」だと語ります。練習での投球数を入力することで肩や肘の故障リスクが自動的に算出されるアプリ「スポメド」を監修するなど、育成年代の障害予防に力を注ぎ続けてきました。
では、成長期の選手たちが故障をせず、さらに球速や飛距離を上げていくために重要なのは、いったいどのようなことなのでしょうか。この連載では、慶友整形外科病院リハビリテーション科の理学療法士たちが、実際の研究に基づいたデータも交えながら怪我をしない体作りのコツを紹介していきます。今回の担当は井上彰さんと貝沼雄太さん。テーマは「怪我を予防するためのプログラム」です。
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成長期の野球選手は、シーズン中にどのくらいの割合で肩や肘の痛みを自覚しているかご存知ですか? 米国での報告ではありますが、その割合は約50%。2人に1人がシーズン中に1度は痛みを自覚しているそうです。選手層の厚いチームであれば休むことができますが、選手の少ないチームでは痛みを堪えながらプレーすることを余儀なくされてしまいます。このような背景から、米国においても投球数や試合数の管理といった怪我を予防するためのガイドラインが作られました。
ガイドラインの遵守にあたっては、(1)怪我をするリスクになる行為を知ること、(2)データに基づいたリスクになる行為の限界値を知ること、(3)正しい評価を行うこと、(4)予防的な運動プログラムを行うこと、という大切な4つの原則があります。今回は、この中から(4)の予防的な運動プログラムについて説明します。
まずは肩関節の筋力です。肩関節のインナーマッスルと肩甲骨のまわりの筋肉の筋力低下も怪我に関連するという報告があります。インナーマッスルについては、この連載の「成長期の怪我はトレーニングで防げる 投球に重要な肩の筋肉を鍛える方法」で説明していますので参照してください。
肩甲骨のまわりの筋肉で重要なのは僧帽筋の下部線維と呼ばれるものです。この筋肉は肩甲骨を背骨に引き寄せる働きをしてくれます。この筋肉が弱っていると、トップポジション以降の腕の位置を維持できなくなります。