年俸240万円から、なぜ日本一のセットアッパーに? 担当コーチが明かす、覚醒の瞬間
6月の育成試合で見せた“仕草”「これでもう大丈夫」「もうここの試合で投げる投手じゃない」
大卒出身の育成右腕にそうチャンスは多くない。結果を残さなければ“カットリスト”候補に挙がる立場。試合でアピールすることが必要不可欠な右腕に、平井コーチは、あるアドバイスを送った。
「彼は入団当初からあまり球を投げなかった。せっかくいいものを持っているのに、長くブルペンに入らない時期もあったので。去年からずっと言っていたのは『3日間、ブルペンは空けるな』です。育成の選手は、打たれようが何しようが、投げられなくなったら終わり。そういった状態を作っていかないと下から上がっていくのは無理だろうと。ましてや、1軍では毎日投げないといけない場面もくる」
野球への取り組み方に変化が見られたのは1年目のシーズン終盤。徐々にプロ仕様の肉体、メンタルに変貌を遂げると、その才能は一気に開花した。今シーズンは2軍での登板も増えると、支配下に上がる直前の6月。アマチュアとの育成試合に登板した宇田川は1球ごとに空を見上げ、心を落ち着かせる仕草を見せることがあった。
「普段は見せなかった姿だったので『何で空見てるんだ?』と聞くと、彼は『一度、頭をリセットするためです』と。いつもはピンチになった後に反省していたが、気持ちに余裕ができ切り替えることができていた。言い方は正しいか分からないですが“言い訳”することなく、どんな環境でも自分の中で処理できるようになっていた。これでもう大丈夫だと。育成会議でも『もうここの試合で投げる投手じゃない』と伝えました」