18歳が「こんなボール投げるのか」 嫌だった“暴れる”平成の怪物から一矢報いた日
野茂氏との対戦ではフォークを捨て、真っ直ぐに絞って打席に入った
直球があってこそ、フォークボールは生きる。独特のトルネード投法にも「あれは別に嫌な感じはしませんでしたね。タイミングとかで悩んだこともない」と言う藤井氏は、とにかく「真っ直ぐ」に絞った。「フォークはなかなか打てない。ストライクが全部フォークだったら、しょうがないくらいに思っていましたね。だからホームランも打ちましたけど、三振も多いと思いますよ」と振り返る。これも駆け引きであり、力対力の勝負。毎回、胸躍らせての対決でもあったようだ。
もう一人は西武・松坂大輔投手だ。「僕が晩年の頃ですけど、高校を出たばかりの投手がこんなボールを投げるのかって思いましたね」と直球、スライダーの勢い、回転、キレ、すべてに衝撃を受けたという。「相性はよくなかった。全部差し込まれていた感じでした。何が嫌かってストライクゾーンの中で暴れること。キャッチャーが外角低めに構えていてもインハイに来るのでなかなか読み切れない。それがボールになればいいけど、ストライクになるんでね」。
もっとも、藤井氏はそんな松坂から節目の通算250号本塁打を放っている。「西武球場で、真っ直ぐをね。彼からのホームランはそれが唯一。記念号を大輔から打てたのはうれしかったですね」。のちに藤井氏がソフトバンクでコーチを務めていた時、松坂も加入。「大輔もそのホームランを『僕、よく覚えていますよ』って言ってくれましたよ」と微笑んだ。そしてエピソードは指導者時代へ。人生を変えた「4スタンス理論」との出会いがあった。
(山口真司 / Shinji Yamaguchi)