1年間未勝利の小学生たちが2時間で激変 「動かないチーム」に植え付けた“意識”

盗塁の意識で練習内容に変化 守備にも打撃にも影響

 では、無死一塁の走者を二塁に進めるには、どうすればいいのか。声を揃えて答える。「盗塁」。辻監督は、五日市少年野球クラブに足りないのは盗塁を含めた次の塁を狙う意識と、無死二塁や1死三塁から走者を進める打撃と指摘。紅白戦を中断して、盗塁、牽制球とクイック、多少のボール球でもバットに当てる練習を始めた。

「盗塁の意識がないチームは、走塁練習だけではなく、盗塁を防ごうとするバッテリーの練習が欠けています。走者を進める考えがあるかないかでは、打撃練習の内容も変わってきます」

 練習の目的が明確になれば、選手たちの意欲や成長は変わる。走者は盗塁を決めるために投手の動きに集中し、投手は盗塁を防ごうと牽制やクイックを工夫する。辻監督はプレーの精度を上げるポイントを織り交ぜながら、試合につながる練習法を伝えた。

 1時間半ほどの練習後、紅白戦を再開。選手の動きや表情は一目で分かるほど変わっていた。一塁走者は無死二塁をつくるために、盗塁やバッテリーミスを狙う。無死二塁で打席に立った選手は、犠打や内野ゴロで走者を進めようと投球に食らいつく。三塁を陥れようとする二塁走者のスタートも見違えるようになっていた。

 考える楽しさや上手くなる可能性を知った選手たちは、限られた時間で1回でも多くプレーする機会を得ようと駆け足で動く。自信を掴んだのか、返事の声もどんどん大きくなっていった。

 実戦で見つけた課題を改善するのが練習の目的。勝利から逆算した考え方がチームに浸透しているかどうかで、結果に差が生まれる。

(間淳 / Jun Aida)

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