千賀は「断トツで体力がなかった」　コーチが明かす、メジャーまで駆け上がれた資質

「選手の全てを引き出す」　昔ながらの練習で体力と精神力を強化

　走り込み、腹筋、背筋など昔ながらのメニューも取り入れて、倉野さんは千賀に練習を課した。体力強化の他にも目的があったと明かす。

「体力面の課題をクリアしないと、技術はついてきません。それから、精神力を鍛える側面もありました」

　厳しい練習をこなすと、誰もが体力の限界を感じる。だが、倉野さんは「たいていの場合、自分が気持ち的にしんどいだけで体には力が残っています」と話す。選手が限界を口にしても余力があると判断すれば、練習を終えなかった。

「選手は限界を感じてから、もう一段階、二段階続けると、力を振り絞ることができるようになります。知識ばかり増えて頭でっかちになると、力を振り絞れません。選手が持っているものを全て引き出すのが、コーチとして大事だと思っています」

　倉野さんは、昭和を象徴する長距離走や1000本ノックといった練習も決して無駄ではないと考えている。大切なのは、練習の意図。1000本ノックは技術の向上ではなく、体力や精神力の強化を目的とすれば、練習の一部に取り入れることを否定しない。