千賀を飛躍させた“教えない”指導 元鷹コーチが貫く「長所を消さない」投手育成

2021年シーズンまでソフトバンクでコーチを務めた倉野信次さん【写真:伊藤賢汰】
2021年シーズンまでソフトバンクでコーチを務めた倉野信次さん【写真:伊藤賢汰】

選手が壁にぶつかるまで待つ すぐに短所を指摘するのは逆効果

「選手が壁にぶち当たっていないのにコーチがいろんなことを言って、わざわざ壁をつくってはいけないと思っています。指導者は選手を見ていると短所が目に付いてしまいますが、すぐに指摘するのは逆効果です。長所が消えてしまいます」

 倉野さんは選手の弱点や課題を克服する必要性は感じている。だが、指摘するタイミングが大事だと考えている。例えば、球速が速くて制球が不安定な投手が、早々にコントロールを改善するフォームの修正に取り組むと、球速が落ちるリスクがある。「直球のスピードがなくなったら、武器のない投手になってしまいます。選手の長所と短所を整理して、長所を全面的に伸ばす方法が基本です」と語る。

 指導者は教えることを役割と考え、選手は教えてもらいたがる傾向にあるという。選手に短所や課題を伝えるのは簡単だが、倉野さんは我慢強く待つ。長所を徹底的に伸ばしてから、課題に取り組んでいく。

「自分が教えて選手を伸ばしたい、自分が育てたいと思うほど、良いコーチングはできません。指導者の役割は、選手が成長する環境を整えることにあると考えています」

 教えるだけが指導者の仕事ではない。時には、教えない指導が選手の可能性を広げる。

(間淳 / Jun Aida)

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