野球人口減少の打開策は? 学童日本一監督が提言…親子に支持されるチーム作り

野球で身に付く先を読む力や考える習慣…保護者に響く付加価値

 だが、今の時代は働き方改革やワークライフバランスが浸透し、育児にかける時間を確保できる家庭が増えた。少年野球チームに厳しいしつけを求めていないのだ。保護者が子どもに野球をやらせたいと思うには、別のメリットが必要になると辻監督は考えている。

「野球は次のプレー、次の次のプレーを考えて瞬時に判断し決断するスポーツです。子どもたちがベンチの監督を見て指示を仰ぐのではなく、先を読む力や考える習慣をつけなければいけません。その力が社会でも生きると感じた保護者は、子どもを少年野球チームに預けようと思うはずです」

 実際、辻監督は10年ほど前から選手にサインを一切出さない「ノー(脳)サイン野球」を実践している。チーム方針に賛同する親子は年々増え、今では所属選手が100人を超えている。

 多賀少年野球クラブは野球人口減少とは無縁の状況だが、辻監督は競技人口の減少が間もなく下げ止まると予想する。そして、その時に備えて必要な要素が2つあるという。

「保護者にとって野球が選択肢になるように、今までの価値を変えていかなければいけません。もう1つ大切なのは、今の指導者が昔の指導者を否定しないことです。相手チームも審判さんも観客の皆さんも、野球に携わる人たちは誰もが仲間。批判からは何も生まれません」

 少年野球チームに入ってプロになるのは、ほんの一握り。知識や技術以外に何を身に付けられるのか。子どもたちや保護者に提供できる野球の価値が、競技人口の増減を左右する。

(First-Pitch編集部)

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