行き場失った内川…走塁コーチの“懺悔” 絶たれたWBC3連覇、脳裏にこびりつく悔恨|球界群像 高代延博#6

痛恨のタッチアウトとなりうつむく侍ジャパン・内川聖一【写真:Getty Images】痛恨のタッチアウトとなりうつむく侍ジャパン・内川聖一【写真:Getty Images】

2013年WBC準決勝で起きた走塁ミス…コーチだった高代延博氏が語る

 2013年の「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」といえば、第2ラウンド・台湾戦(3月8日、東京ドーム)で侍ジャパン・鳥谷敬が敢行した盗塁も語り継がれる名シーンだ。1点を追う9回表2死一塁で二盗に成功。井端弘和が同点タイムリーを放ち、延長戦で勝ち越して白星をつかんだ。内野守備走塁コーチだった高代延博氏も「さすがのプレーだった」と称賛した。だが、大会自体の話になると、それよりも準決勝の“重盗失敗”が頭をよぎるという。

 アウトになればゲームセットの場面で鳥谷のしびれる盗塁だった。高代氏もこう話す。「韓国やキューバは執拗にけん制してくるけど、台湾は1球けん制したら、2度目はなかった。ミーティングでのことをああいう現場でピンと頭にくるのがさすがだと思いましたね。鳥谷のファインプレーですよ。それもノーサインですからね」。

 だが、盗塁の話になると、どうしても高代氏の頭に浮かぶのは準決勝・プエルトリコ戦(3月17日、AT&Tパーク)の重盗失敗シーンだ。0-3の8回裏に侍ジャパンは反撃。1死から鳥谷の三塁打、井端の右前タイムリーで1点を返し、内川聖一も右前打で続き一、二塁とした。打者は4番・阿部慎之助。プエルトリコはここで投手を左腕ロメロに代えた。そして、阿部への2球目だった。

 二塁走者の井端はいったんスタートを切ったが、すぐに止まって二塁に戻った。だが、一塁走者の内川は止まることなく走り、気付いた時には行き場を失い、なすすべなく捕手・モリーナに追い詰められてタッチアウトだ。チャンスがつぶれて、その回の日本は1点止まり。1-3で準決勝敗退となった。

 あの場面では「行けたら行け」のグリーンライトのサインが出ていたという。「俺も言葉足らずだった。もし、スタートが遅れたりしたら、止まってもいいよと言えばよかったものの、井端が1回、バーンと走ろうとしていったから、内川は下を向いて一目散に行ったでしょ。止まることもあるよ、ああいうこともあるよ、止まってもいいからとのコミュニケーションができていれば、あんなことはなかったと思って。反省点ですよね」と高代氏は悔やむ。

「前もってチームで話していれば…ものすごく申し訳ない気持ち」

 捕手のモリーナは強肩で知られ、内川にしてみれば、それもプレッシャーになったことだろう。高代氏は「コミュニケーションで、どうや、どうや、どうや、行くんか、行くんか、行くんか、いやあ、やめとこというのを前もってチームで話していれば、内川が泣かんでも済んだなと思って、ものすごく申し訳ない気持ちになった」と昨日のことのように神妙な表情で話した。

 実はあの時、井端に代走・本多雄一も検討されたという。「でも、井端はボコボコ打っていたし、あの時、代わったピッチャーはめちゃめちゃモーションが大きいとミーティングでも言われていた。それで井端でもいけるんじゃないかということで、そのままになった。難しいですよね。まぁ、それも終わってからは何ともいえないですね」。

 もしもあれがグリーンライトではなく「次の投球でスチールしろ」のディスボールだったら、どうだったか。「でも、そうなると、スタートがあまり良くなくても行っちゃうこともあるからね」と高代氏は言う。「たら」「れば」は言ってもどうしようもないが、それが分かっていても思い出せば考えてしまう。それくらい責任を感じているし、無念ということだろう。

 イチローらがいた2009年と違って、2013年の侍ジャパンにはメジャーリーガーが1人もいなかった。そんな中で阿部を中心にチームはまとまり、山本浩二監督を胴上げしようとの思いでみんな必死になって戦った。残念ながら準決勝で夢は絶たれたが、高代氏は貴重な、何ものにも代えられない経験をさせてもらったと思っている。

 今回のWBCに出場する侍ジャパンに向けては「日頃の戦いに向けてのミーティングでしっかりコミュニケーションを取ること。これは絶対大事だと思います。組織力が日本の強みでもあると思うんでね」と力を込めた。「もちろん一番になってほしいです」。2009年以来のWBC優勝シーンを高代氏も切に願っているし、楽しみにしている。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

球界群像〜高代延博編〜

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