曲げない“オレ流”に直訴「これでは無理です」 最初で最後の落合監督との電話|球界群像 高代延博#12

中日監督時代の落合博満氏【写真:共同通信社】中日監督時代の落合博満氏【写真:共同通信社】

高代延博氏は今年、大経大硬式野球部の監督に就任

 今年から大阪経済大学の硬式野球部監督を務める高代延博氏は、2004年から2008年まで中日コーチを務めた。指揮官はそのシーズンに就任した落合博満氏。沖縄・北谷キャンプ初日に紅白戦を行ったが、困ったのは、それまでの2軍キャンプ地だった読谷球場を「使わない」と言っていたことだった。人数的に、どう考えてもひとつの球場でキャンプを実施するのは無理。シーズンオフの間に高代氏は落合監督に「読谷を借りてください」と電話したという。

 高代氏の申し出を落合監督は受け入れてくれた。立浪和義ら自分で調整できそうな選手は読谷で練習することになった。「基本的に落合監督は自分が決めたことは曲げません。俺が電話したのも後にも先にもそれ1回だけでしたね」。練習はハードだった。「夜間練習ができるような体力を残すなってね。だから(全体練習の)時間は長かった。ずっとノックしていたし、腰痛防止に宿舎に戻ってからはプールで30分は泳ぐようにしていた」。

 落合監督は野球の話を始めたら止まらない。本当に野球が好きな人だ。高代氏もいろんな話を聞いたし、当時の経験もまた役立っているという。2008年で中日を退団し、そのタイミングで原辰徳監督に侍ジャパンコーチに誘われて「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」優勝を味わった。その後、韓国プロ野球のハンファ、岡田彰布監督のオリックス、山本浩二監督の侍ジャパン、和田豊監督、金本知憲監督、矢野燿大監督の阪神でコーチを務めた。

 2020年シーズン限りで阪神を退団。2023年1月1日付で大経大野球部監督に就任した高代氏は今、学生たちのレベルアップにあの手、この手を考えている。「盗塁は全部(次の球で走れの)ディスボール。なぜ、そこで俺がサインを出したかを考えてほしい。根拠があるから。それで覚えてほしいんです。なんでセーフになったか。そしたら、自分がバッターボックスに入っても相手の配球を考えたりすると思うんでね」。レベル的にはまだまだとのことだが、その分、伸びしろも多いから楽しみがある。

今年から大阪経済大学の硬式野球部監督を務める高代延博氏【写真:本人提供】今年から大阪経済大学の硬式野球部監督を務める高代延博氏【写真:本人提供】

学生に「失敗してこれじゃいかんということを覚えてほしい」

「練習ではいっぱい失敗してくれと。無難に練習はするな。極端に言えば、失敗してこれじゃいかんということを覚えてほしい。2度とあんな失敗はしたくないというのが人間の気持ちだと思うんでね」。それはここまでの高代氏の野球人生にも通じるものがある。多くの失敗経験があるから今があるのだ。

 2009年WBCでは練習日にシートノックをして、最後、キャッチャーフライを3本パーフェクトに終えた時、拍手喝采が起きた。米国メディアに高代氏のノック技術の素晴らしさが取り上げられたが、それも、広島コーチ時代から数え切れないほどノックをしてきたからこそ。WBCの合宿前にも毎日、ノックバットで素振り。振り込んで振り込んで準備した。選手に迷惑をかけてはいけないの思いで……。

 ここまでいろんなことがあったが、すべて野球のおかげで道は開いていった。現在、高代氏にはもうひとつ肩書きがある。「横浜ゴムMBジャパン株式会社スポーツマテリアルアドバイザー」。ラバーフェンスや人工芝を全国の球場に導入するお手伝いだ。知人から誘われて始めたそうだが「ラバーフェンスはプロ野球だったら当たり前のようにあるけど、まだまだ金網で、下がコンクリートってところは多い。それで怪我した子もいるし、何とかできないかと思ってね」。これも野球への恩返しの一環だ。

「この先、何があるかわからないけど、2009年のWBCで優勝したのが、やはり僕の中では、1番、2番のニュースですよね」と高代氏は話す。いや、まだまだ、これで終わりではないはずだ。大沢啓二さん、三村敏之さん、星野仙一さん……。多くの指導者に学んだことを次の世代に伝えていく使命がある。大経大でもノックバットを振り続ける68歳の挑戦は始まったばかりだ。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

球界群像〜高代延博編〜

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