伊藤智仁コーチが引き立てるヤクルト投手陣 専門家が見る“充実の春”の舞台裏
ストライクゾーンは“4分割”で指導
このように選手それぞれが明確な目標を設定するサポート。同時に、目標に挑戦する過程もまた、前向きな声掛けで背中を押してくれるという。
「目標達成までの過程で越えるべき課題設定がとても分かりやすくシンプルです。今年のキャンプ序盤に市川(悠太)投手がブルペンで徹底的に右打者のインコースに投げる練習をしていました。この日はインコースの制球が課題なので、他の部分の出来が多少悪くても問題ない。インコースに投げきれたことをしっかり評価してくれます。こうやって小さな成功体験を繰り返すことで、選手は自信がつきますし、頑張ろうという意欲も湧いてくる。伊藤コーチはネガティブな言葉は決して言いませんし、ある程度長い目で見て大きく育ててくれる懐の深さがあるので、特に若い投手はやりやすいと思います」
ストライクゾーンについての考え方も特徴的だ。一般的には縦に3分割×横に3分割=9分割の形で考えることが多いが、「伊藤コーチは外寄りか内寄りか、高めか低めかの4分割なんです」。そこには細部に囚われすぎず、伸び伸びと投球してほしいという想いがあるようだ。
「もちろん制球力は大切ですが、あまり気にしすぎて小手先だけの投球になってしまっては意味がない。ホームベースの上で勝負するイメージで、大きく伸び伸びとした投球をするようにアドバイスを受けます。色々なことをシンプルに伝えてくれるので、選手にはとてもありがたいことだと思います」
昨季はチーム防御率(3.52)がリーグ4位ながら2連覇を果たしたヤクルト。リーグV3、日本一奪還に向けて、伊藤コーチの下で育ってきた投手たちの成長した姿に期待したい。
(佐藤直子 / Naoko Sato)