「なんで打つんだ…」球場が“変な雰囲気”に 引退試合でエースが望んだ真剣勝負

ラスト登板で燕・古田と対戦…遊ゴロに打ち取った

 だが、それで終わりではなかった。ラスト登板はその翌日。敵地・神宮球場でのヤクルト戦だった。広島が6-3でリードした8回2死一塁、打者・古田のところでマウンドに上がった。「ブルペンで投げ始めた時からファンがワーワーってなって。前の日が引退試合だったから、次の日に投げるとは思われてなかったでしょうからね。それで出ていったらカープファンだけでなく、ヤクルトファンまでが声援をくれたんです。うれしかったですね」

 その試合は古田の引退試合でもあった。「9月に古田さんが引退するとなった時に『最後は投げさせてくれ』って話はしていたし、ブラウン監督だったし、もしチャンスがあればという感じだった」。結果はショートゴロ。「肩を前の日で使い切って腫れ上がっていてね。打たせようと思ってゆっくり投げたら、球が遅すぎて、古田さんも泳いで先っぽで……」。

 年は2歳違うが、プロ入りは同期で、アマチュア時代には日本代表でバッテリーを組んだこともある。やはり感慨深いものがあった。このアウトでホールドがついた。「その後(鈴木)尚典が『僕が最後のバッターと思ったら、最後じゃないじゃないですか』って言ってきたけどね。ああいう舞台を作ってもらったというのも、すごく、そういうところも幸せでしたね」。こうして現役生活が終わった。

 引退後は評論家生活を経て、2015年から広島2軍投手コーチを務め、2019年には1軍投手コーチに。そして2020年から2022年まで、第19代広島監督として指揮を執った。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY