「直す」ではなく「伸ばす」 鷹が育成方針「ホークスメソッド」を発表した狙いと背景
「無駄なことをやらなくて済むように、無駄を削ぎ落としていいところ取り」
ソフトバンクが野球界に一石を投じる取り組みをスタートさせた。14日、福岡・春日市にある県営春日公園内野球場でホークスジュニアアカデミー「アドバンストクラス」の開校式が行われ、その中でホークスの育成の考え方、ノウハウから導き出した育成方針「ホークスメソッド」を発表した。指導者に向けた指導理念をまとめたもので、今後はジュニアアカデミーやジュニアチームの指導者がこのメソッドに基づいた指導を行い、野球振興に繋げていく考えだ。
球界全体で見渡しても、プロ野球の球団が指導理念、方針を対外的に示し、打ち出すというのは珍しい試みだ。ソフトバンクといえば、千賀滉大投手(メッツ)や甲斐拓也捕手、牧原大成内野手、石川柊太投手、周東佑京内野手といった球界を代表する選手を育成システムの中から輩出した。そんなホークスがなぜ、彼らを育てた球団の理念を示すことになったのか。
メソッド策定において、自身の指導理念も球団へと伝えた王貞治球団会長は発表の場でこう語った。「野球界にはこういう形でやったらいいという“教本”みたいものがない。それぞれ教えている人たちが自分の経験で、自分が理解した理論とか練習方法とかを教えているんで、まちまちなんですね。それは子どもたちにとっても良くないんですよ、遠回りになるから。教わる側が近道できることが僕は一番大事だと思う。無駄なことをやらなくて済むように、このメソッドは無駄を削ぎ落として、いいところ取りしてる。そう自負している」。野球をする子どもや若者たちに“遠回りをさせない”“迷わせない”ことが考えの根幹にあるという。
三笠杉彦取締役GMはこう補足する。「今、プロ野球界で明確にこういったマニュアルがなかったというのが現実。色々な経験を持った方に指導をお願いし、あとはその方が指導を考えるだけだった。スクールに来て、ホークスのOBが厳しい指導をするということだけでホークスらしさを出すだけではなく、ホークスで大事にしていることに則って指導してもらう。ホークスとしてどうしていきたいということを指導者の方にお願いすることががないと、将来性がないと感じています」。