30点大敗チームが3年で“優勝4回”の強豪に 杉並中野ポニーが重視する「3つの指針」
考える野球で弱小から常勝に変身
田辺さんから受けた教えは、小学生が相手だろうと、高校生が相手だろうと、大人が相手だろうと変わらない。監督を任されるようになってからは、子どもたちに答えを教えず、考えさせることを徹底した。アウトカウントや出塁状況を見て、どんな守備位置に就いたらいいのか、打席ではどんなアプローチをすればいいのか、まずは子どもたちの自由にさせた。
「最初は大変でしたよ。でも、不思議なもので子どもたち同士で話し合ったり、声を掛け合ったりしながら、どうするべきかの答えを出すんです」
自分たちで考える習慣がついた子どもたちは、見る見る間に成長していった。就任当初は0−30で負けていたチームが、3年後には中野区で4回優勝を飾り、東京都でも3位入賞を果たした。幼児から中学生までが集まるチームの人数は約30人から72人まで増加。チームとしても成長する中で「さらに子どもたちが伸び伸びと野球を楽しめる、いい環境を整えたい」と考えた末、新たな挑戦を続けるポニーリーグへ新生・杉並中野ポニー(杉並中野GALAXY)として加入した。
「早くから投球数制限を設けるなど、子どものためであればルール変更も厭わない。伝統や慣習が重んじられる野球界の中で、理念を貫きながら時代に合わせた変化もしている。子どもたちが野球をやりやすい環境を整えるにはいい場所じゃないかと思いました。
多くの指導者は変化が必要だと感じている。ポニーリーグに加入するチームが増えている理由は、そこにあると思います。よくダルビッシュ(有)投手や筒香(嘉智)選手が発信してくれていますが、野球に携わる大人は歩みを止めず、先進していくべきなんでしょうね」
4月のある日、中野区内のグラウンドには、学年などで色分けされたカラフルなTシャツを着た子どもたちが、弾けるような笑顔と元気な声を上げながら白球を追う光景が広がった。この笑顔がずっと続くように、栄枝さんは田辺イズムを胸に子どもたちをサポートしていく。
(佐藤直子 / Naoko Sato)