パンツ一丁の“憧れの人”に大胆行動 「初めて胸毛を見た」押し掛けた巨人ロッカー

長嶋氏に一発浴び、近藤貞雄ヘッドに「ちょっと来い!」

 試合は8-14で敗戦。「宿舎に着いてバスから降りると、近藤さんが俺を待ち構えていた。『ちょっと来い!』って耳を引っ張られて、部屋まで行って、またコンコンとやられました。正座で。ずっと言いたかったですけどね。カーブはキャッチャーのサインに従っただけですって、言えるわけないけどね」。長嶋氏に打たれたホームランは近藤ヘッドに耳を引っ張られた強烈な思い出とともに鈴木氏の脳裏にインプットされている。

 1974年8月6日の巨人戦(中日球場)も忘れられない。鈴木氏が長嶋氏から三振を奪った試合だ。その記念シーンをパネルにしてもらい、翌8月7日の巨人戦開始前、鈴木氏はアクションを起こした。「長嶋さんが練習を上がるのを見て、三塁側の巨人ロッカーに入っていった。長嶋さんがパンツ一丁でいた。初めて胸毛も見た。そしてサインお願いしますって、パネルとマジックを出した」。

 会話の内容も覚えている。「長嶋さんは俺を見て『おー、お前、球速いなぁ』って。それから『お前、茂原だったけ』って言われたので『いや、成東です』って答えたら『あっ、そうか、成東高校か。あそこには俺、3回ばかり行ったかなぁ、グラウンドの周り、桜の木が植わっててなぁ』って。“うわってる”って千葉県の古い人が使う言葉だもんね」。

 とにかく感激しきりだった。「サインもしてくれた。ひと言入れてくださいってずうずうしく頼んだ。“快打洗心”って書いてくれた。心を洗ってからクリーンヒットが生まれるって、そういう快打洗心ね。ジャイアンツカレンダーを毎年買っていて、長嶋さんのページは快打洗心って書いてあった。本物をもらっちゃった。そのパネル、俺の宝物ですよ」。

 その日の巨人戦に鈴木氏は2番手で登板し、3回無失点投球で、プロ初勝利をマークした。記念すべき“長嶋サイン”を手に入れた日は自身のメモリアルデーにもなった。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY