投壊ハムを救う“元・開幕投手” 愛称「教授」の2年目右腕…先発ならではの時間管理
北山亘基がしっかり利用した“先発とリリーフの違い”
先発は投げてはベンチに戻り、攻撃が終わればまた出ていくという流れを繰り返す。一度マウンドに立てば、とにかく力いっぱい投げて抑えるリリーフとの違いは“合間”があると事前に分かっているかどうかだ。この時間の活かし方で、結果が大きく変わることもある。
四球を重ねた北山が何をしたかといえば、ベンチ裏で「真っすぐ立てているか」を確認し、再びマウンドへ向かったのだという。「手元が数ミリ変わると、ストライクゾーンへ入るか入らないか」という世界では、自らの異変に気付き、いかに修正できるかも大切。「中継ぎはマウンドで修正しないといけない。それには限度があるので、イニングごとにチェックできれば修正しやすい」と、適性は十分だ。
京都成章高でも、京産大でも先発として活躍していた。その当時の経験を「掘り起こしながら」戦っている。もともと、イニング間にしっかり自分を見直す方だった。プロではその塩梅を少し調整している。「やりすぎてもよくないので……。学生時代は裏で腹筋とかもしていましたけど、そればかりしていると投球に集中できなくなる。一番は意識しただけで体が動くことですから」。一つ上のレベルを目指しての“修行”が続く。
北山のプロ1軍でのキャリアには、先発登板が1つだけ刻まれている。昨年3月25日、ソフトバンクとの開幕戦でプロ初登板、初先発を記録した。新人の開幕戦先発は、2013年の則本昂大(楽天)以来、パ・リーグ史上6人目という快挙だった。ただ当時と現在の意識は「全然違います」とキッパリ。「あの時は中継ぎの気持ちで行ったので……。2イニング行けたらという感じで『まずは1イニングをしっかり。様子次第で2イニングもあるよ』と言われていましたから」。2度目の“初めて”に向け、準備は怠らない。
リリーフでは150キロを超える球速も、少し抑え気味。力の入れ方は「7~8割ですね」といい「それでファウルを取れれば、ピッチングを組み立てられるので」と続けた。プロで初めて5回を投げられたことを喜ぶが、経験と試行錯誤が生んだ成果と言えるだろう。
自身も、先発とリリーフの両刀使いだった木田優夫2軍監督は「147~8キロ出ていたし、十分だよ。そんなに出力が低いわけじゃなかったし、あれでいい」とイニングを重ねる能力を称えた。ただ「これからそれを半年続けなきゃいけないから、それが大変」というハッパも忘れない。「教授」が日本ハム先発陣の救世主となる日も、そう遠くはなさそうだ。
(羽鳥慶太 / Keita Hatori)