無人のマウンド「行く気力なかった」 温和な指揮官が激変…「泣きべそかいた」続投劇

現在の鈴木孝政氏【写真:山口真司】
現在の鈴木孝政氏【写真:山口真司】

与那嶺監督から「お前が投げて負けたなら、みんなが納得する」

 日本語が得意ではない温和な指揮官が繰り出した2発のパンチ。この後、鈴木氏はマウンドに向かった。「泣きべそをかいて行ったような感じだった。でもそれが力になったんだよね。(10回表をゼロに)抑えたからね」。

 中日は10回裏にサヨナラ勝ち。鈴木氏は勝利投手になった。「試合後、ウォーリーから監督室に呼ばれて『何で殴ったかわかるか』って言われた。『お前が投げて負けたなら、みんなが納得する。スタンドも納得するんだぞ。だから俺はやった。これからああいう態度を取られたら、こっちは困る』って」。指揮官の熱い言葉だった。

「ウォーリーは優しい人だからね。おそらく人に手を出すなんてことはやったことがなかったと思うよ。そんな人がやってくれたもんね。もっと強くなれってね」と、鈴木氏は感慨深げに話した。そして「勝って当然だけど、負けても納得する。そう言われたら自信になりますよ」と続けた。実際、この一件が糧となり、最多セーブ投手のタイトルもつかんだのだ。

 ロジャーに浴びた手痛い一発を鈴木氏は忘れることはない。「そういうことを経験しないと成長はないですよ、絶対に。絶対ないと思う。挫折とか失敗をしないと力にならない」。そう断言した。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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