大谷翔平と組んだ6日後…記者が遭遇した“降格の瞬間” 荷物運ぶ姿に感じた厳しさ
タクシーに乗る前にファンも気を遣いながらサインを要求
オーキーと目が合うと、右手を挙げて挨拶をしてくれた。悲壮感があるわけでもなく、優しい笑顔だった。記者も返したが、それ以上は何も聞くことはできなかった。
ただ、一つ疑問があった。なぜオーキーは球場前でタクシーを待っていたのだろうか。というのも、この日はクリーブランドからボルティモアに移動した初日。前日に知らされていればボルティモアに来る必要はなく、当日に知らされたとしても、ホテルから移動すればいいのではないか。となると、球場についてから「3Aに行ってくれ」と言われたのか――。それはかなり酷な宣告ではないか、などと想像を巡らせていた。
メジャー取材経験の長い記者に聞いてみると、「想定だけど、用具を取りに来たのではないか」とのことだった。メジャーでは、遠征の際にはスタッフが用具を運ぶ。そのためホテルを経由せずに球場へ運ばれた可能性を教えてくれた。確かにオーキーは大きな荷物を持っていた。ただ、そこでも自分で用具を持って行くメジャーとマイナーの差を痛感したのだった。
オーキーは到着したタクシーに自らの大きな荷物を詰め込んだ。そのタイミングで、数人のファンがサインをねだり、オーキーも優しく応じた。ただ、ファンの人たちもマイナーへ行くことはわかっていただろう。「行っていいのかな」と一度ためらい、気を遣いながらそっと近づいたように記者には見えた。偶然立ち会った瞬間で、メジャーの厳しさを再確認させられた。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)