「きっと後悔する」 “ナックル姫”がメジャー挑戦へ…31歳、進退も見据えた決断の裏側

6月に渡米するエイジェック女子野球・吉田えり【写真:荒川祐史】
6月に渡米するエイジェック女子野球・吉田えり【写真:荒川祐史】

「先のことは何も考えてない」31歳、進退も懸けたメジャー挑戦

 今回、吉田が身を置く先は米独立のエンパイアリーグ。ニューヨーク州を拠点とし、6月から2か月間、40試合のリーグ戦が行われる。結果を残せればマイナーリーグやハイレベルな独立リーグから声をかけられることもあるという。そこからメジャーを目指すが、「結果が出なかったら、途中でクビという話も聞いているので……」。幸い吉田は契約により期間内での“安全”は保証されているものの、過去に途中解雇を経験したことがあるからか、この話の時だけは少し暗い表情も浮かべた。

 しかし、「去年から球速もまだ出るようになりました。30歳を過ぎて、どれだけナックルボールを磨いていけるのかなっていうのが、ちょっと楽しみな部分ですね」と悲壮感はない。むしろ「最初に独立リーグで挑戦してた頃と同じ気持ちで、何とかナックルボールで上のレベルに行くっていう強い気持ちを持って今回は挑戦したいです」と、その目は先だけを見据えていた。

 31歳、引退する選手も少なくない時期にさしかかり、吉田自身「年齢のせいにすることも増えた」と体力面の不安も感じている。しかし同時に「ナックルボーラーの選手は30歳を過ぎてから、いろんな経験を得て、技術面も精神面も磨かれて習得できるものなのかな」と伸びしろも口にする。事実、憧れのウェイクフィールドは44歳まで現役を続け、2012年にナ・リーグのサイ・ヤング賞に輝いたRA・ディッキーも42歳までプレーした。可能性があるのに、自らそれを捨て去る必要はない。

 とはいえ、悠長にしている余裕もない。「久しぶりの、本当に何年ぶりに男子の中に混じって野球をするので、6月からの2か月間はナックルのことだけを考えて挑戦したいなと。その先のことはまだ何も考えてないです。本当にこの2か月間、自分自身がどう思うかで決めたいなと思います」。

 望もうが望まなかろうが、吉田えりの人生は大きく揺れ動いていった。ナックルボールのように不規則に――。そして彼女の終着点がどこに行きつくのかは、“ナックル姫”でさえも分からないのである。

【実際の映像】急変化する魔球は今も健在 米挑戦の吉田えり、カメラが捉えた“衝撃”のブルペン

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