日本ハム支える23歳“怪力”スラッガーに成長の跡 セイバー目線で選ぶパの5月MVP
実績ある浅村、柳田以上の得点を叩き出した日本ハムの23歳
打者の評価としては、平均的な打者が同じ打席数に立ったと仮定した場合よりも、どれだけその選手が得点を増やしたかを示す「wRAA」を用いる。上位ランキングは以下の通りとなった
○万波中正
wRAA:8.95、99打席、OPS.916、打率.267、本塁打7
○中村奨吾
wRAA:6.44、91打席、OPS.903、打率.338、本塁打2
○浅村栄斗
wRAA:6.33、96打席、OPS.872、打率.253、本塁打7
○柳田悠岐
wRAA:5.96、104打席、OPS.889、打率.267、本塁打6
○頓宮裕真
wRAA:5.20、97打席、OPS.858、打率.369、本塁打0
○安田尚憲
wRAA:4.70、76打席、OPS.889、打率.290、本塁打3
5月のパ・リーグの打者成績を見ると、打率4割以上とか、OPS1.000以上といった突出した記録が生まれていない。今季も投高打低のパ・リーグを象徴しているようだ。そんな中で最も高い「wRAA」を記録したのが日本ハム期待の23歳、万波中正である。
3月にバンテリンドームで行われた侍JAPANの壮行試合にサポートメンバーとして出場すると、広いバンテリンドームで特大のホームランを放ち、今季の活躍を予見させた。勢いはシーズンに入ってからも続き、4月はチームでトップのwRAAを記録し、低迷するチームのけん引役を担ってきた。5月に入り打撃はさらに磨かれ、長打率.600と大きくチームに貢献している。
昨季まで荒いと評価され、外角のボールとなるスライダーに手を出して空振りするイメージがあった打撃は、40%以上あった「O-swing%」が30%台にまで減少、全投球に対する空振り率「SwStr%」も、昨年の23%から14%にまで改善してきた。コンタクト率が上がったことにより、持ち前のパワーが打球に乗り移る確率が上がってきたのだ。怪我人が多いチーム状況の中、丈夫な身体と磨かれつつある技術でチームに貢献する万波中正を5月の月間MVPパ・リーグ打者部門に選出する。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。