侍右腕が過ごした“苦悩の春” ダルビッシュから独り立ちの決意「頼りすぎてもダメ」
2軍で防御率10.38の宇田川優希「相談したかったけど…」
本拠地での1軍練習合流は、究極の“気分転換”だった。ファームで調整を続けているオリックスの宇田川優希投手が、7日に京セラドームで行われた巨人戦の試合前練習に、姿を現した。仲間から拍手やグータッチで歓迎されると、曇り気味だった表情は晴れやかになった。
宇田川は、3月に行われた第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では「侍ジャパン」の一員として3大会ぶりの世界一に貢献。大会期間中は2試合のマウンドを経験し、無失点投球。輝く金メダルを手に帰国した。活躍が注目され、順風満帆と思われた2023年シーズンだったが、信頼感が高まるにつれて緊迫した状況での登板を任されることも多くなり、上半身のコンディション不良で4月23日に出場選手登録を抹消された。
2軍再調整中もコンディションが上がらず、ファームでは今季5試合に登板し、防御率10.38と、苦悩の日々を過ごしている。そんな剛腕の“リフレッシュ”を試みた首脳陣は7日に「1日限定1軍練習参加」を敢行した。宇田川は「いろいろ話もできた。練習が終わったら帰る予定でしたけど、試合が見たくなった。本番を見れば、気持ちも変わるかなと思って。5回で帰る予定だったんですけど、6回が終わるまで見ていました。やっぱり、このマウンドでもう1回投げたいなという気持ちが強くなった」とスッキリした表情で胸中を明かした。
WBC期間中は、パドレスのダルビッシュ有投手から学ぶことがたくさんあった。2月の侍ジャパン強化合宿では「宇田川さんを囲む会」と題して、投手陣全員の食事会も開催された。ダルビッシュの気遣いもあり、一気に仲間と打ち解けた。帰国後はシーズンに集中した。今季は9試合に登板して0勝0敗、7ホールド、防御率1.17の成績。ダルビッシュにはWBC終了後も気にかけてもらい、出場選手登録抹消直後には「『大丈夫?』と連絡をくださった」と感謝した。
その後の約1か月半は“あえて”連絡を取らなかった。「この期間……。いろいろ悩んで、聞いてみたいなと思ったこともありました。でも、ダルさんはダルさんで忙しいと思ったんです。だから、連絡していないですね」。ただ、遠慮したわけではない。「もちろん、相談をしたかったけど、頼り過ぎてもダメだなと。WBCでお世話になり過ぎたので、ここは『頼っちゃダメ』だと思って、連絡をしませんでした」。24歳は腹をくくっていた。