9番で終わらぬ打順…大会で“14番打者”登場 リトルリーグ「全員連続オーダー」の狙い
リトルリーグの「全員出場義務」の中で生まれた「全員連続オーダー」
硬式野球のリトルリーグで、今季から“新ルール”が導入されて話題になっている。ベンチ入りメンバー(最大14人)全員が打席に入る「全員連続オーダー制」で、今月22~23日に開催される「第57回全日本リトルリーグ野球選手権大会(メジャー部門)」でも適用される。子どもたちに「より多くの機会を与えたい」という考えから実現した。
米国発祥のリトルリーグ。エンゼルス・大谷翔平投手は岩手の「水沢リーグ」で野球を始めた。日本ハム・清宮幸太郎内野手は「東京北砂リーグ」で大活躍し、世界選手権を制覇した。そんな伝統があるリーグの国際本部(米国)は規則変更を決定。これを受け、日本リトルリーグ野球協会はこの2月、「全員出場義務に関する2023年規則変更について」という声明を発表した。
「全員連続打撃オーダー制」は9番で一巡ではなく、守備に就いていない選手を含め、ベンチ入りメンバー全員が打席に入る。ベンチ入り選手全員の出場を義務付けるルールは守備機会などを含めて以前からあったが、それをシンプルにし、徹底させた格好だ。
声明では、「全員出場義務はリトルリーグがいち早く取り入れた決まりですが、その理念の根底には規則の範囲の中で『一人でも多くの選手に野球を楽しんでいただき、より多くの機会を与えたい』という考えです」と述べている。
勝利最優先策には警鐘「有資格選手を最大限ベンチに」
「全員連続オーダー制」を今年導入した大会は、メジャー部門(10~12歳)とインターミディエット部門(11~13歳)の全日本選手権で、予選から適用されている。昨年までは複雑な条件があった「全員出場義務」だが、今回のルール変更でシンプルになったことで、監督や審判員、スタッフらの負担は軽減。運営サイドは肯定的な声が多かったという。
ただ、懸念材料もある。リトルリーグでは、1チームにつき最大14人がベンチ入りできるが、勝利を最優先するために意図的にベンチ入り人数を制限する可能性も生まれる。これを制限する規則はないが、日本協会は声明で「選手の身体的、技量的に安全面での懸念がある場合をのぞき、有資格選手を最大限、大会登録しベンチに入れていただくことを希望します」と訴えている。
ベンチ入りメンバー全員が出場することを前提に、“改革”に着手しているリトルリーグ。今回の「全員連続オーダー制」は、少年野球のあり方として一石を投じるものになりそうだ。
〇全員連続オーダー制のポイント
・大会登録選手は全員打順に入れる。全て打順は固定
・守備の選手交代は自由(投手・捕手は別途規則がある)
・リエントリーは廃止、コーテシーランナーを採用
・試合中に故障などで出場できなくなった選手の打順はスキップ
・適用は国際トーナメントのみ(ブロック、連盟予選を含む)
※コーテシーランナーとは2死からの臨時代走。走者が投手や捕手の場合、コーテシーランナーに交代できる。
(片倉尚文 / Naofumi Katakura)
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