大谷翔平のような「スターを育てたい」 来年発足…巨人の中学生チームが掲げる理念

「ジャイアンツU15ジュニアユース」の代表を務める大森剛氏(左)と監督に就任した片岡保幸氏【写真:読売巨人軍提供】
「ジャイアンツU15ジュニアユース」の代表を務める大森剛氏(左)と監督に就任した片岡保幸氏【写真:読売巨人軍提供】

2024年から活動を開始する「ジャイアンツU15ジュニアユース」

 巨人が運営する中学生の硬式野球チーム「ジャイアンツU15ジュニアユース」が第1期生の選手を募集している。エンゼルス・大谷翔平投手のようなスーパースターの育成を目指すと同時に、プロ野球選手にならなくても社会で活躍する人材や野球の指導者を育てる理念を掲げている。チームの代表は大森剛氏、監督は片岡保幸氏が務める。

 2024年から活動を開始するジャイアンツU15ジュニアユースは「トップ選手養成」「人間力形成」「社会貢献(還元)」の3つを理念に掲げている。トップ選手養成は、元プロによる指導や、巨人でも取り入れている動作解析や心理学などを活用し、世界を舞台に活躍する選手の育成を目指す。大森代表は「大谷翔平選手のようなスーパースターを育てたいと思っています。今の子どもたちは世界に目を向けています。世界で活躍する選手の育成は、野球の裾野を広げる上で重要だと考えています」と語る。

 トップ選手の育成を掲げる背景には、深刻な野球人口の減少がある。軟式野球のデータになるが、2009年に30万人を超えていた中学生の競技人口は10年余りで半数以下に減っている。大森代表は、スター選手に憧れて野球を始める子どもを増やすビジョンを描く。

 一方、プロになれる選手は一握りしかいない現実にも目を向けている。人間力形成と社会貢献を理念に掲げるのは、野球を通じて社会に必要な力を育む狙いがある。大森代表は、こう話す。

「社会に出れば人とのつながりが重要になりますし、1人では生きていけません。人間性や自立といった話も多感な中高生の年代に社会とどのように関わるかが大事とスタッフ間で話しています。特に、協調性やコミュニケーション能力は中学生の年代から磨いていく必要があると考えています」

楽しみながら自然と上手くなる指導…野球以外のメニューも導入へ

 プロ野球選手になるかどうかを問わず社会性は求められる。そして、この2つ目の理念「人間力形成」が、3つ目の理念「社会貢献」にもつながっていく。大森代表はジャイアンツU15ジュニアユースの選手が野球の指導者になる将来を見据えている。

「子どもたちが大谷翔平選手のようになれなくても、長く野球を続け、将来は野球をよく知る指導者になってほしいと思っています。私たちが伝える指導法や育成メソッドをきっかけに、50年、100年先まで野球を継承してほしいという思いがあります」

 ジュニアユースでは野球の技術向上だけではなく、運動能力を伸ばすメニューも積極的に取り入れる方針だという。体の操作に必要な神経系の動きは小、中学生で一気に伸びるため、バドミントンや水泳、テニスボールやソフトボールを使ったメニューなど、選手の可能性を最大限に伸ばす方法を模索している。チームを率いる片岡監督が意図を説明する。

「反復練習は大切ですが、飽きてしまう面があります。自然と正しい体の動かし方が身に付くアプローチを考えています。選手が練習に興味を持って、楽しみながら結果的に野球が上手くなる環境を整えたいと思っています」

 現在40歳の片岡監督自身が子どもの頃は、“怒声罵声”や根性論が当たり前だった。ただ、時代の変化を実感している。「選手からも保護者からも色んな話を聞いて、考え方をすり合わせることが大事だと考えています」。プロ野球の第一線で活躍した知識や経験を伝えることはあっても、考え方を押し付ける指導をするつもりはないという。

 来年からスタートするジャイアンツU15ジュニアユースは現在、選手を募集している。対象は来年4月に中学生になる選手で、15~20人を予定している。入団希望者は9月25日までに、球団ホームページの応募フォームに必要事項を入力する。応募多数の場合は内容を審査し、運動能力や実技を判定する練習体験会で最終的な結果が発表される。

(間淳 / Jun Aida)

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