「結果を出さないと…」の考えとは“無縁” 元盗塁王が実践したチャンスの生かし方

FA移籍で巨人に入団、コーチも務めた片岡保幸氏(右、左は原辰徳監督)【写真:読売巨人軍提供】
FA移籍で巨人に入団、コーチも務めた片岡保幸氏(右、左は原辰徳監督)【写真:読売巨人軍提供】

日本シリーズの走塁やWBCの活躍…大舞台で存在感示した片岡保幸氏

「割り切り」が結果につながった。西武と巨人で13年間プレーし、2024年に新設される中学硬式野球「ジャイアンツU15ジュニアユース」の監督に就任した片岡保幸氏は現役時代、「結果を出さないといけない」と考えたことがなかったという。練習では妥協せず、試合は楽しむ意識でプレーしていた。

 2017年に現役引退した片岡氏は西武時代、最多安打や盗塁王のタイトルを獲得した。13年間の現役生活について「プロになるまでもプロに入ってからも、節目節目で良い監督に恵まれる運の良い野球人生でした。大した選手ではなかったのに試合に使ってもらえたおかげです」と話す。

 本人は謙遜するが、試合に起用されても結果を残せなければ、次の機会は失われていく。厳しいプロの世界で生き残るには、チャンスを生かす力が求められる。片岡氏は西武時代、不動の1番打者として安定した成績を残しただけではなく、大舞台で強さを発揮する選手だった。

 2008年の巨人との日本シリーズ第7戦。8回に死球で出塁すると盗塁と犠打で三塁に進み、続く打者の内野ゴロで“ギャンブルスタート”のサインに応えて同点のホームイン。チームを日本一に導く走塁を見せた。日本代表が連覇を成し遂げた2009年のワールド・ベースボール・クラシックでも、“代走要員”だったはずが第2ラウンドからはスタメンを任せされて打率.308、大会最多タイの4盗塁を記録した。

 片岡氏は「しっかりと割り切れたのでチャンスを生かせたのだと思います」と現役時代を振り返る。試合で結果を出さないといけないと考えたことはないという。

「この試合で何とか結果を残さないといけないと思う選手は多いですが、自分は『ダメなら仕方ない』という考え方でした。試合で緊張はします。ただ、やるしかないと前向きに割り切っていました」

「ジャイアンツU15ジュニアユース」の監督に就任した片岡保幸氏【写真:読売巨人軍提供】
「ジャイアンツU15ジュニアユース」の監督に就任した片岡保幸氏【写真:読売巨人軍提供】

努力の大切さ知った高校時代…1冊の本が転機に

 試合で割り切れるのは、努力に裏付けされた自信があるからと言える。「試合は楽しくと思っていたので、その分、練習では追い込んでいました」。努力の大切さを知ったのは高校時代だった。片岡氏は甲子園出場を目指し、地元・千葉から栃木・宇都宮学園(現:文星芸大付)に進学した。しかし、3年春まで聖地に立てなかった。一方、ライバルの国学院栃木と作新学院は、片岡氏が3年の時(2000年)に選抜大会に出場していた。

「県大会では自分たちがいつも3番手で、国学院栃木や作新学院とそれほど差はないと感じていました。その2校が選抜でベスト4、ベスト8まで進むのを見て、もっと本気で野球に取り組まないといけない危機感が芽生えました。わざわざ千葉から出てきたのに甲子園に行けずに終わってしまうと、気持ちを入れ替えました」

 寮生だった片岡氏は最初に、勇気を振り絞って同じく寮生活をしていた野球部部長の部屋をたずねた。「練習では上手くいきますが、試合で結果を出せません」。悩みを打ち明けると、1冊の本を手渡された。様々な競技のメンタルに関する内容が書かれていた。片岡氏はその本を常に持ち歩き、大事な箇所をノートに書き写した。

「自分は色々と考え込むタイプでした。本の中に打撃は投手のリリースポイントに集中すれば、次の投球が直球か変化球か迷わないと書いてありました。その意識を心掛けながら、練習量も大幅に増やしました」

 全体練習後に寮で夕食を取ってから仮眠し、ウエートや素振りを毎日続けた。「努力すれば、こんなに結果が変わるのかと実感しました」。打撃は見違えるように向上した。3年夏の栃木大会決勝では、自身のサヨナラ安打で甲子園出場を決めた。

 偶然にはチャンスをものにできない。チャンスを呼び込み、結果につなげる準備が不可欠となる。

(間淳 / Jun Aida)

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