守備の“常識”「両手で捕る」は正解? 上達速度に差…試合で使う場面「ほとんどない」
内野守備指導の専門家・武拓人氏はキャッチボールから「片手捕球」を推奨
声のかけ方1つで、守備の上達スピードは変わる。野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」が27日、「大人のための少年野球塾2023」を開催した。小・中学生への指導経験が豊富な“凄腕コーチ”12人を5夜連続で招くオンラインイベントで、1日目に登場した内野守備の専門家、ディフェンスデザイナーの武拓人(たけ・ひろと)氏は、内野守備の練習の際に指導者や保護者に注意してほしい3つの言葉を挙げた。
内野守備の指導を専門にする武氏は、これまで約600人の選手に知識や技術を伝えてきた。少年野球の現場を見る中で、選手への声掛けで注意してほしい言葉が3つあると強調する。
1、両手で捕りなさい
2、捕るところを見なさい
3、下で待ちなさい
どれも少年野球のグラウンドで、よく耳にするアドバイスだが、捕球の精度を下げたり、守備範囲を狭くしたりするリスクがあると武氏は指摘する。
武氏が指導の基本とするのが「片手捕球」。キャッチボールの時から両手でばかり捕球しないよう、選手に伝えているという。
「両手捕球が基本と言われていますが、試合中に両手で捕球する場面はほとんどありません。ゴロを両手で捕りにいくと頭が下がってしまい、打者走者や味方の守備位置が見えにくくなってしまいます。また、片手で打球を捕りに行った方がギリギリまで両腕を振って走れるので、守備範囲が広くなりますし、バウンドが変わった打球にも反応しやすいです」
グラブを地面につけて構えると「体の連動性が失われる」
両手捕球と同様に、頭が下がる動きにつながる「捕るところを見なさい」という声掛けも武氏は“NGワード”に挙げている。プロ野球選手を見てもわかるように、内野手がゴロの捕球姿勢に入る時、視線はグラブの中ではなく、その“何メートルか先”に向いている。
武氏は「打球をよく見て捕ろうとすると、視線が下がって足が動かなくなり、体の連動性が失われてしまいます。子どもたちに『捕るところを見ろ』と言うと、捕球前に見なければいけない打球の速さや跳ね方、打者走者の動きに意識が向かなくなります」と説明した。
3つ目の「下で待ちなさい」は、グラブを下げて地面につけて待つ構え方を指す。グラブを構えたところに低いグラウンダーが来れば捕球しやすいが、「軟式球の打球は弾んで、腰より高い位置で捕球するケースの方が多いです。グラブを下に構えると、走って打球を追いにくくなります。バウンドが合わずに悩む選手は、グラブを地面につけて構え、1歩目が遅くなりがちです」と武氏は話す。
子どもたちは野球がうまくなりたい気持ちから、素直に指導者や保護者の話に耳を傾け、言葉をそのまま受け取りがちだ。指摘された通りに練習した結果、プレーの精度を欠く可能性がある。たとえ短い言葉でも、子どもたちへの影響は小さくない。
12月1日(金)まで申し込み受付中…参加費は無料
Full-Countと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では12月1日までの期間、午後8時からオンラインイベント「凄腕コーチ12人が技術指導 大人のための少年野球塾2023 〜子どもを伸ばすための集中講座〜」を5夜連続で開催中。小・中学生の現場で豊富な実績を持つ指導者や、話題の野球塾コーチ・トレーナー12人が出演し、選手たちを成長へ導くドリルやトレーニングを実技解説する。参加費は無料。最終日の午後7時まで参加申し込みは可能。
【大人のための少年野球塾2023・詳細】
【参加はTURNING POINTの無料登録から】
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(間淳 / Jun Aida)
球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。
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