小6で球速130キロ、全国2位 “落選”乗り越え実感する3か月効果「すっごく増えた」
楽天Jr.の大廣翔治監督が重視する「食トレ」…体力向上に効果を実感
26日に開幕する「NPB12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP 2023」において、過去5年で優勝1度、準優勝2度、昨年も3位と上位に進出しているのが、東北楽天ゴールデンイーグルスジュニアだ。就任4年目の大廣翔治監督は、本番での勝利を求めるだけでなく、中学以降につながる技術面・体力面での「基礎づくり」を、活動期間の約3か月間、“あえての厳しさ”を持って16人の精鋭たちに施している。
走塁・バントなどの細かい野球の技術はもちろん、指揮官が重視しているのは「食トレ」だ。毎週末の合宿中以外も、自宅に戻ってからの毎日3食の内容を報告してもらい、栄養士の指導のもと量や内容についてフィードバックをする。
「小学5、6年生は成長期に入る時期ですが、細かい栄養面については知らないことが多い。保護者の皆さんも含めた意識改革も大事になってきます」。選手たちの体重は3か月で8~10キロ増量するといい、厳しい練習にも体力がもつようになる。練習量をこなせるようになれば、技術面の向上にもつながり、球速がアップするなどの効果を実感できる。
たとえばエース格の1人、日下蓮志選手(6年=宮城・荒浜ビックウェーブ)。「初めは爪楊枝のように体が細かったんですが、量を食べることで体重は6キロ増え、球速も4~5キロ速くなったんです」と大廣監督。自身で効果がわかれば、周囲に言われなくても進んで食事をするようになる。「自分で取り組むようになれば本物。本当に成長しましたね」と目を細める。
全国2位の身体能力…投打の主軸・柳沼勇俊選手は「泥臭く勝っていきたい」
もう1人の主戦投手で、打っても4番を務める柳沼勇俊選手(はやと、6年=山形・峰栄スピリッツ)にも話を聞くと、「体重は15キロ増えて、体力もすっごく増えました。筋肉も大きくなりました」と実感を込めて語る。
身長174センチ、体重65キロ。ソフトボールで活躍した両親の影響もあり小学1年生で野球を始めた柳沼くんは、走り幅跳びとジャベリックボール投げで競う「コンバインドB」で今夏全国2位に輝いた身体能力の持ち主でもある。走り幅跳びは5メートル20センチ、100メートルは12秒5、1000メートルは3分20秒が自己ベストだ。
1年前の“悔しさ”が原動力になっている。小学4年時に楽天ジュニアの存在を知り、5年生で申し込んだものの落選。「球速、足の速さ、スイング速度……全てで力不足でした。見返してやろうと思い、1年間努力して選ばれることができました」。ジュニア入りしてからのトレーニング効果もあり、球速は1年で117キロから130キロにまでアップ。スイング速度も130~140キロにまで向上したという。
大廣監督からは日常生活での自覚についても教わり、「日頃の風邪予防も徹底するようになり、心が変わりました」。将来の夢は意外にも「動物トリマー」だそうだが、まずは26日からの本番に向けて、「投手としても打者としても流れを作れるようなプレーをして、チームみんなでつないで泥臭く勝っていきたいです」と意気込みを語ってくれた。
毎年春先から夏場にかけて、東北6県の学童大会を視察に回るという大廣監督は、「関東とかに比べて、東北のレベルは落ちているように感じる」と懸念する。それでも、過去の楽天ジュニアの卒業生たちは、それぞれの地元に戻り経験を生かして活躍。2021、2022年に日本選手権で連覇した青森山田リトルシニアでも多くのOBがレギュラーを飾り、2019年には12球団トップの甲子園出場者を輩出している。
大廣監督らコーチ陣が「本気でぶつかり」指導した16人の精鋭たちが将来、東北野球の起爆剤となることにも期待したい。
(高橋幸司 / Koji Takahashi)
球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。
■「First-Pitch」のURLはこちら
https://first-pitch.jp/