近すぎると「顔色伺ってしまう」 選手の成長の妨げに…適切な保護者との“距離感”
埼玉・吉川ウイングスでは保護者の練習参加が小学4年まで…高学年は“見守り”
悪気はない保護者の言動が、結果的に子どもの成長を妨げる可能性がある。全国大会出場経験のある埼玉・吉川市の学童野球チーム「吉川ウイングス」では、高学年の保護者の役割は練習の“見守り”を基本としている。保護者と選手の距離感が近すぎるとデメリットがあるという。
吉川ウイングスでは現在、園児から小学4年生までのグループと、小学5、6年生のグループに分かれて練習をしている。4年生までのグループではコーチの他に、保護者が打撃投手やノッカーをしながら選手たちにアドバイスをしている。指導の中心を担う安保大地コーチは「低学年は基本を身に付けることも大事ですが、野球を楽しむことに重点を置いています。保護者には積極的に練習参加してもらっています」と説明する。
一方、5、6年生の練習は監督とコーチに指導を一任する。保護者の役割はノックの補助、ティー打撃のトス、道具の運搬など、指導者から依頼された内容に限られる。保護者が指導者とは違う考え方や練習法を子どもに伝え、混乱させることを避ける目的がある。
同じグラウンド内で指導者と保護者から異なる指導を受けた子どもたちは、どちらの言葉を信じればよいのか迷ってしまう。岡崎真二監督は「保護者と選手の距離感が近すぎると、選手は親の顔色を伺いながらプレーしてしまうケースがあります」とデメリットを指摘する。
声をかけるのは余程の時…安全で効率良い練習には「保護者の力は不可欠」
ただ、岡崎監督はチームに「保護者の力は不可欠」と力を込める。限られた指導者の数で園児や小学生の安全を確保し、効率良く練習するには、サポートがなければ難しい。また、チームの活動は土日に限られるため、選手と過ごす時間は指導者よりも保護者の方が圧倒的に長い。岡崎監督は、こう話す。
「平日の自主練習でも保護者の方々の協力が必要になります。私たち指導者から、チーム練習以外の部分で保護者に細かく指示を出す必要はないと思っています。グラウンドでも、保護者の方に選手と距離を取るように伝えるのは目に余る時だけです。社会人になってまで、他の大人に注意されるのは気分が良くないですから」
吉川ウイングスでは総会などで、選手と保護者の距離感についてチーム方針を説明している。選手の成長を望むのは指導者も保護者も同じ。誤解が生まれないように方針を共有する。大人の間に齟齬があれば、子どもたちが影響を受けてしまう。
(間淳 / Jun Aida)
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