野球用具“高騰”への懸念「敷居高くなる」 球界として必要な支え「親子の負担軽く」
2012年最多勝・沢村賞…攝津正さん「野球ができるのは当然ではない」
グラブ、バット、スパイク、ユニホーム……。子どもたちが野球を始めるには、道具が必要だし費用もかかる。昨今の生活用品を含めた“値上げラッシュ”も波及し、プロ野球のOBからも、野球への敷居が高くなってしまうことへの懸念の声が多く聞かれる。昨年12月に横浜市内で開催されたイベント「DREAM BRIDGE DAY」(NPO法人ベースボール・レジェンド・ファウンデーション主催)に参加した、元ソフトバンク投手の攝津正さんも「野球界として変えていかなければいけない部分」と語る。
「DREAM BRIDGE」は、ひとり親家庭や児童養護施設、里親家庭で暮らす球児(小学4年生から中学3年生対象)を対象に、野球用具を寄贈するプロジェクト。金銭的要因などで野球継続を断念してしまう子どもたちを減らすため、ソフトバンク・和田毅投手ら現役選手・OBが支援を続けている。
プロ経験者として何か社会貢献活動をと考えていたときに、「和田さんから声をかけていただきました」と攝津さん。家庭環境による難しさはあれども、野球をやりたい・諦められないという子どもたちの作文を読み、「自分自身は、やりたかった野球をやらせてもらえたけれど、それは決して当たり前ではないと感じました。子どもに好きなことをさせてあげられないのは、親御さんにとっても悲しいこと。こうした活動は保護者の方々にとっても“救い”になると思います」と語る。
競技人口減少が叫ばれる中、やめてしまう選手を食い止め、少しでも裾野を広げるためにも、「道具で敷居が高くなってしまうのは、野球界として変えていかなければいけないこと」と言う。使わなくなった用具の寄付はもちろん、大谷翔平投手(ドジャース)が全国の小学校にグラブ約6万個を寄贈したように、用具を配布してシェアしてもらい、野球に触れてもらう機会を作るという手段もある。「チームの負担や親子の負担を軽くできることを、少しでも考えていければ」と攝津さんは語る。
初めてグラブを手にした時には「うれしくて一緒に寝ました」
誰よりも「継続は力なり」を実践してきた1人だ。2008年ドラフトで指名されたときは、すでに26歳。社会人(JR東日本東北)8年目でようやく夢をつかんだ。抜群の制球力と宝刀シンカーを武器に、最優秀中継ぎも最多勝・沢村賞も獲得したプロ10年間の大活躍については、改めて言及するまでもない。
「長い時間がかかったとしても、諦めなければ必ずチャンスは巡ってくる。『野球が好き』という気持ちがあるから続けてこられたし、好きなことを続けているのであれば、後悔することはありませんから」
幼い頃、初めてグラブを手にして「一緒に寝た」時のうれしさは、今でも心に刻まれているという。だからこそ、困難があったとしても、子どもたちには“好き”という感情をいつまでも大切にし、継続する力を身に付けてほしいと願う。少年・少女たちの可能性を絶やさないために「今後も手助けをしていければ」と攝津さんは語った。
(高橋幸司 / Koji Takahashi)
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