最近の中学生「なかなか大きい声出ない」 コロナ禍も影響…“雰囲気”変える率先手本
埼玉・上尾市の高校4校による合同野球教室…中学生たちに与える好影響
埼玉県上尾市内の高校4校(上尾高、秀明英光高、上尾南高、上尾橘高)の野球部が共同で、今月8日、同市内の中学野球部員約150人を対象に野球教室を開催した。県内の中学野球部員のうち、高校進学後も野球を続ける生徒が約半数にとどまっている現状を打破するため、高校野球の魅力をアピールするのが狙いの1つ。参加した現役中学生たちはどう受け止めたのだろうか。
この野球教室は、春3回・夏4回の甲子園出場を誇る上尾高のグラウンドを会場に、毎年行われており今年で7回目。4校の指導者が顔をそろえ、上尾高の1、2年生部員54人が講師役やサポート役をこなした。中学生たちは試合形式のノック、ブルペンでの投球練習、フリー打撃などに取り組んでいた。
上尾西中の投手兼三塁手・関谷武志くん(2年)は「声を出すことを含めて、自分のチームはまだまだ足りていなかったと感じました。(高校野球は)レベルが違う。僕らはムードが暗くなっていきがちなので、もっと明るく、楽しく野球をできる環境にしていった方がいいと思いました」と感想を述べた。
上尾高OBで上平中野球部顧問の大野優教諭は、「最近の中学生はおとなしい子が多い。コロナ禍を経た影響もあって、なかなか大きい声が出せません。時々私の方から『黙って野球をやっていて、楽しい?』と問いかけるほどです」と説明する。
子どもの気質が変わり、昭和、平成のように指導者や先輩が「声を出せ!」と頭ごなしに強制することが難しいご時世でもある。そんな中でも大野教諭は「毎年この野球教室に参加した後は、刺激を受けるようで、翌日から練習の雰囲気が変わり、声が出ます」を実感している。
1975年の夏に甲子園でベスト4入りを果たしたこともある古豪の上尾高は、練習内容は時代とともに科学的なものに変化しているが、選手全員が大声を張り上げ、機敏に動く様子は“昭和の雰囲気を残す”と評される。片野飛鳥野球部長は「僕自身は『声を出せ!』と言われて出していた世代ですが、今は違います。ウチは普段、僕以上に(高野和樹)監督が声を出しています。大人が『こうやって声を出すのだよ』と手本を示してあげることが大事な時代ではないでしょうか」と語る。
高校生ピッチャーの実演に中学生たちも“どよめき”
確かに、この日の野球教室でも、高野監督は所用で不在だったが、片野野球部長が拡声器を手に、たとえば試合形式のノック中には「ランナー、回れ回れ」などと、選手たち以上に大きい声で鼓舞し続けていた。“DJコーチ”と呼びたくなるほど、活気あふれる姿で盛り上げた。
もちろん技術面での刺激も強い。野球教室の最後には、上尾高の主力打者がフリー打撃を披露。さらに幸泰士(2年)、飯島恒太(2年)、藤村美輝(2年)の上尾高3投手が相次いでマウンドに上がり、変化球を交えてピッチングを披露し、中学生を「オーッ!」とどよめかせた。
前出の上尾西中・関谷くんは「高校生は、スピードはもちろん、フォームがきれいだと思いました。僕の場合、1か所を意識すると他の部分を忘れてしまったりして、なかなかうまくいかないのですが、とても参考になりました」とうなずいた。
高校野球の活気とレベルの高さを目の当たりにした中学生たちが、進学後どんな選択をするか。こういう試みに、球界全体の未来がかかっていると言えそうだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
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