球審が「ストライクに見える」捕り方とは? 元プロ伝授、“客観目線”のキャッチング術
元広島・木村一喜氏力説…キャッチボールがきちんとできれば「打撃も良くなる」
元プロ捕手が小・中学生向けに“キャッチング論”を披露してくれた。木村一喜氏はかつて身長170センチの小柄ながら、“強打の捕手”として広島、楽天でプロ9年間活躍。現在は、横浜市「tsuzuki BASE」のべースボールアカデミーでコーチを務めるなど、平日は関東で小・中学生の指導に携わり、週末は長野県諏訪市で、伯母から引き継いだ老舗鶏唐揚げ専門店を切り盛りする“二足のわらじ”指導者として活動している。
木村氏はまず子どもたちに、ポジションに関わらず、キャッチボールの段階からグラブの“ポケット”(捕球面の人差し指付け根付近にできる窪み)で捕ることを意識させるという。
「ポケットにボールが収まると、しっかりキャッチできますが、ずれるとボールがグラブの中で遊んでしまい、投げる手にうまく握り替えることができません。ポケットで捕ることによって、スムーズに送球へ移ることができるのです」
特に捕手にとっては、キャッチャーミットのポケットは「ボールを捕った時に『パンッ』と一番いい音が鳴る大事な部分」。投手は、ブルペンで捕手がいい音を立ててボールを捕ってくれると気分がよく、逆に無音だと「球威がないのか?」と疑心暗鬼になったり、自信をなくしたりすることがある。木村氏は「投手を調子に乗せるのも、捕手の役目です」と強調する。
さらに、しっかりポケットで捕ることを習慣づけると、打撃にも好影響が及ぶという。
「そもそもグラブのポケットでボールを捕れない人が、長いバットの芯でボールをとらえられるはずがない。ましてや、バットの丸い面で球体のボールをとらえるのは、なおさら難しいです」
木村氏は常にポケットでボールを捕ってきたため、グラブをはめる左手人差し指の第2関節より下が、右手の同じ部分より太くなってしまっているほどだ。
低めの球は投手寄り、高めは手前で捕ると「ストライクに見えやすい」
また、木村氏が実戦で捕手に求めるのは、「球審から見てストライクに見えやすい捕り方」だ。
基本的には「低めは前方(投手寄り)、高めは手前で捕る」。あらゆる投球が基本的に高い所から低い所へ軌道を描くのだから、高めいっぱいの球はより手前、低めいっぱいの場合はより前方で捕球することは、理にかなっている。
縦に落ちるカーブ、スライダーに対しては、ミットを下から上へ動かしながら、「ストライクゾーン内にボールを“押さえてあげる”イメージで捕ると、いいと思います」。一方、内・外角いっぱいのコースは、ミットの捕球面をややストライクゾーン内に向け、「ゾーン内に“押さえてあげる”イメージで捕ると、ストライクと言ってもらいやすいと思います」という。
捕手のキャッチングは、投手の心理、球審目線でのボールの見え方など、客観的な視点を持つことが秘訣と言えそうだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
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