食細いのに“どんぶり無理強い”は逆効果 「食べない息子」を変えたプロ母の発想力

少食の子どもに栄養をとらせる工夫とは【写真:渡邊元美さん提供】
少食の子どもに栄養をとらせる工夫とは【写真:渡邊元美さん提供】

少食の子どもに試したい「2つの方法」…管理栄養士の渡邊元美さんが解説

「食が細く、なかなか食べてくれない」と悩みを抱える保護者は少なくない。特に少年野球をはじめスポーツをする子は、自身も「体を大きくしたいけど、食べたくても食べられない」と悩むケースは多い。横浜高校野球部の元寮母で、松坂大輔(元レッドソックスほか)、筒香嘉智外野手(現DeNA)らを食事面からサポートしてきた管理栄養士の渡邊元美さんが、2つの方法を教えてくれた。

「1つ目は、とにかく食べやすい、小さいおにぎりや一口サンドイッチを用意することです」

 食が細い子は、握りこぶしのような大きなおにぎりを見ただけで食欲が失せてしまう。「こんなに食べられない、無理」と思ってしまい、手をつけない。でも小さいおにぎりやサンドイッチならば、「このくらいなら食べられるかも?」と手を出しやすい。

 現楽天の渡邊佳明内野手を息子に持つ渡邊さんも、試合や遠征時には、弁当以外に、すぐに食べられる小さなおにぎりを、いくつか持たせたという。

「移動もあるので朝4時起きなんていうと、内臓も活動モードに移れず、ご飯が喉を通りません。そういう時にも、一口おにぎりなら移動中や休憩時間にも、パッと口に入れられます」

 小さなおにぎりの良さは、食べやすさだけではない。大きいおにぎりだと一度に食べきれずに、残りをラップなどに包み直して戻すことになる。いくら自分の食べかけのおにぎりでも、もう一度食べようという気にはなれないし、衛生面からもお勧めできない。

 渡邊さんは佳明選手のために、試合の時だけでなく、普段から「小さなおにぎり」を用意していたという。

「100円ショップに売っているような、お寿司のにぎりを簡単に作れる型を使って、小さくご飯をにぎって海苔を巻いたり、ふりかけをかけたりして、お皿にのせておきました」

 すると夕飯後、テレビを見ながらでも、1つ、2つとつまむようになる。食が細い子でも、目の前に食べやすいサイズのものがあれば、なんだかんだと、つまんでくれるそうだ。その“ちょっと”が、結果的にエネルギーの積み重ねになっていく。

 ちなみに、一口サイズの補食できるものを用意しておくのは、プロ野球の世界でも同じだという。「食への意識が高いプロ選手のレベルだと、自分のエネルギー不足が自覚できるそうなので、試合途中でもベンチ裏に用意されている補食をさっと1つ、2つ食べていくこともあるそうです」。

管理栄養士の渡邊元美さん【写真:伊藤賢汰】
管理栄養士の渡邊元美さん【写真:伊藤賢汰】

少しずつ「こっそり」食べる量を増やしてみる

 2つ目は、「子どもが気づかないうちに増やす」方法だ。

 親としてはせっかく用意したのに、なかなか食事が進まない子に、ついつい「なんでこれくらい食べられないの」などと、小言まがいの言葉が出てきてしまいがち……。

「一番良くないのは、『◯◯君は毎日どんぶり3杯も食べるそうよ。あなたももっと食べないと、レギュラーに選ばれないわよ』みたいな言い方です。食事はやはり楽しく食べたいですよね。そこで、本人が気づかない程度に少しずつ量を増やしましょう。ご飯を盛るとき、いつもよりティースプーン1杯分だけ増やす。ちなみにティースプーン1杯で約10グラムです」

 いきなり山盛りのどんぶり飯では、子どももうんざりするだけだ。そこで、ほんの少しだけ増やす。大抵は気づかずに食べる。1週間くらい続けたら、さらにティースプーンもう1杯分を増やす。1か月くらいかけてティースプーン3~4杯分……。というように、少しずつ増やしていくのがポイントだ。

 小学校高学年から中学生の段階では、成長スピードにも差がある。だからこそ、親は体の小さい・大きいの差が気になって、子どもに無理強いをさせてしまいがちだ。

「成長のピークは人それぞれ違うのです。いきなりグンと背が伸びたり、体重が増えたりする時期もあります。程度の差こそあれ、成長ピークは必ず来ます。だから、小学生のうちから食べる量を無理なく増やして、ピークを待ちましょう」

 内臓系の成長も個人差がある。その成長が進んでくれば食べられる量も増えてくる。焦らず、少しずつ、「食べられるための工夫」を試してみてほしい。

(大橋礼 / Rei Ohashi)

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