日本一チームの“実戦的”バント練習 季節で異なる意味…相手の隙突く「必須要素」
中本牧リトルシニア・村上林吉監督「どんな名将も走塁の判断は教えられない」
秋と夏ではバントの意味合いが変わる。日本一の経験があり、プロ野球選手も多数輩出している横浜市の中学硬式野球チーム・中本牧(なかほんもく)リトルシニアは、バントや走塁の練習を重視する。同じバントでも、その意味は時期によって変わるという。
中本牧リトルシニアは今春、大阪府で開催されたシニアの日本一を決める全国選抜野球大会を制した。全国大会は常連だが、この大会の優勝は26年ぶりとなった。
チームが時間を割く練習の1つがバント。アウトカウントや走者を設定し、試合形式で練習を繰り返す。スクイズ1つ取っても、どんな投球もバントを試みる一般的なスクイズ、セーフティスクイズ、2ランスクイズと幅広い。チームを指揮する村上林吉監督が、試合形式のバント練習に重点を置く理由を説明する。
「バント練習は判断力が鍛えられます。どんな名将でも、選手に走塁の判断を完璧には教えられません。判断力は実際に選手が経験して身に付けていくしかないんです。走塁の判断やバントの精度が高い選手は、高校に進んでからもアドバンテージがあります。指導者は起用したくなりますから」
そして、バントが持つ意味は時期によって変わる。新チームが始動する秋から春にかけては「相手の守備を乱す目的」、春から夏にかけては「確実に走者を進めて1点を取る狙い」があるという。村上監督が語る。
「秋は新しくチームがスタートしたばかりなので、バント処理が確立されていないチームが少なくありません。特に一塁へ暴投するケースが多いです。相手の守備を乱すためにバントをするわけです。一方、チームが仕上がっている夏は、バントで走者を先の塁に進めて後ろの打者で1点を狙う作戦を取ります。選手はバントの重みが分かっています。同じバントでも、考え方が違うわけです」
「隙があったら仕掛ける」…2ランスクイズも練習
バントを得点につなげるため、中本牧リトルシニアはベースランニングも大切にしている。走者二塁の場面で、シングルヒットでも得点を奪えるように体を傾けてベースを蹴り、加速できるように練習する。村上監督は「飛行機のイメージで」と選手にゲキを飛ばす。
大会で一度使うかどうか、決して頻度の高くない2ランスクイズの精度も高めている。相手の守備位置や転がった打球の方向や強さなど、二塁走者には難しい判断が求められるからこそ、判断力を養う効果的な練習にもなる。村上監督は「2ランスクイズの練習をするチームは少ないですが、隙があったら試合で仕掛けます。相手の隙を突くには判断力と勇気が重要になります」と話す。
試合の流れを変え、勝負を決めるプレーにもなるバント。日々の練習や判断力の差が勝敗を分ける
(間淳 / Jun Aida)
球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。
■「First-Pitch」のURLはこちら
https://first-pitch.jp/