本塁打を「必然的に打つ」思考とは? 大谷翔平ら指導…専門家が説く“知識増リスク”
日本ハムと巨人で選手サポート…白水直樹氏が明かす幼少期から学びたい“継続の力”
練習や試合で“結果”を残す選手の共通点は、どこにあるのか? トレーナーやコーチとして日本ハム時代のダルビッシュ有投手(パドレス)や大谷翔平投手(ドジャース)、近藤健介外野手(ソフトバンク)らをサポートした白水直樹さんは「偶然の成功は成功じゃない。選択をちゃんとできる選手が、長く結果を出している」と口にする。
白水さんは日本ハムと巨人で計13年間、トレーナーやコーチを務め、現在は都内のトレーニングジム「PROGRESS Sports Performance Lab.」の代表としてトップレベルの選手を中心に小学生にも指導している。効果的に力を発揮するために必要なスクワット、ランジの筋力トレーニングの他に、打撃で重要な「重心移動」などの理論が多くのプロ野球選手に慕われている。
世界で活躍するダルビッシュ、大谷は若くして肉体を強化する意図を理解し、土台ができた上で技術をプラスし成功を収めた。周囲からは「そもそも持っているもの(身長、体重、リーチなど)が違う」と思われがちだが、白水さんはそれを否定する。プロで活躍する一流選手たちは「ベーシックなトレーニングをやめた時期がない」と断言する。
正しい姿勢でのスクワット、ランジを新人時代から続け「筋量は落とさなかった」という。基礎となるトレーニングを継続しつつ、その後は個々が目指す運動の特徴に合わせたトレーニングをプラスしていく。
長いシーズンでは体が張ったり、重くなったりすることもあるが、「一流になりきれない人は、そこでやめてしまう。怪我をしては元も子もないですが、筋肉量を増やし、パワーを向上させる過程には、コンディションが短期的に悪くなることも想定しながら進めなくてはいけません。その上で、もうワンランク上のレベルでプレーできるようになります」と、継続することの力の大切を口にする。
短絡的に結果を求めてしまうと「“たまたま”に惑わされてしまう」
継続できない選手の特徴は明確だ。現在は多くの情報が簡単に得られる時代になり、選手が持つ知識量は過去とは比べ物にならない。ただ、短絡的に結果を求めることで、本来効果的な練習やトレーニングを、すぐに切り捨ててしまう傾向があるという。
「野球の世界ではたまたまヒットになったり、抑えたりすることがある。その“たまたま”に惑わされるのです。一流選手は、そこで『意図的に抑えていない、打てていない』という考えに至ります。偶然の成功は成功ではない。大谷選手と話をした際の一例ですが、100%のスイングで本塁打を打つのと、70%のスイングで打つのとでは、体の反応や正確性が変わってくる。余裕を持って打つほうが必然と本塁打は出る、ということです」
日本ハム、巨人のトレーナー時代に新人合同自主トレを担当した際は、プロに入ってきた時点で正しい筋力トレーニングの形ができていた選手は2割ほどだった。「何となくできていた人もいましたが、しっかりとした知識を持っている人は少ないです」。効率良く力を発揮する形を身に付けるためには、正しい知識を持った上での“継続力”が、一番の近道になる。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)
球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。
■「First-Pitch」のURLはこちら
https://first-pitch.jp/