球速アップに導く“聞き慣れない骨” 小中学生でも効果…「支える感覚」養う練習術
プロ選手もサポートする船木永登氏が「立方骨」の重要性を解説
聞き慣れない体の部位が、パフォーマンスを劇的に変える可能性を秘めている。少年野球からプロ野球まで、あらゆるカテゴリーの選手をサポートしているプロトレーナーの船木永登さんは、「立方骨」の重要性を説く。ジュニア期から立方骨を意識することで先のカテゴリーにも生きてくるため、小学生向けのメニューも考案している。
船木さんは専門学校で体の構造を詳しく学び、実際に選手をサポートする経験を重ねることで知識を深めている。社会人やプロといったトップ選手のトレーニングも担当する中で、立方骨の大切さが知られていない現状を知った。
立方骨は、足の薬指と小指の延長線上で交わる場所にあり、“体重を支える骨”と言えるほど重要な役割を担う。立方骨に体重を乗せることで地面反力をとらえられるため、球速や打球速度アップにつながる。また、臀部神経とつながっているので、立方骨が機能するとお尻にも自然と力が入る。打撃で軸足に体重を乗せる時や、投球で並進運動をする時など、地面からの力を利用する時に立方骨を使えるかどうかが大事になるという。
船木さんのジムに通う選手の中には、立方骨のトレーニングでパフォーマンスが上がったケースは多い。ベンチ入りの当落線上にいた大学生がリーグで表彰されるほどの結果を残したり、最速153キロだったプロ野球投手が158キロまで更新したりしているという。船木さんは「パフォーマンス向上にはいろいろな要因があると思いますが、立方骨トレーニングのおかげと言ってもらえました」と話す。
地面反力を使えるようになると「スランプを抑える効果も」
野球では走攻守、あらゆるプレーで足の裏がカギになる。体の中で唯一、地面と接している足の裏で、地面から力を吸収し、下半身から上半身へと力を伝えていくためだ。
船木さんは「小・中学生のうちに立方骨で地面反力をとらえられるようになると、上のカテゴリーで生きてきます。足を上手に使えると、スランプを抑える効果もあります」と説明する。胸郭や胸椎といった部位も大事だが、下半身の動きが悪くなれば上半身に制限がかかる。体の土台となる立方骨を知らずして、効果的に力を発揮することはできない。
船木さんがジュニア期の選手に勧めるトレーニングに、立方骨のスクワットがある。長さ30~40センチ、高さ3~4センチほどの板を2枚用意し、それぞれの板に片足ずつ乗せて立つ。この時、薬指と小指で立つことを意識し、立方骨の延長線上に膝がくるようにスクワットする。
正しい動きができていると、お尻に刺激が入る。船木さんは「普段は無意識で走ったり、動いたりしていると思いますが、立方骨で体重を支える感覚をつかむことが大切です」と狙いを話す。
立方骨で体を支えると地面の力を最大限に吸収できる。バランス良く立つことができるため、他の部位に余分な力が入らず、スムーズな動きの連鎖にもつながる。体の中では目立たない小さな立方骨が、球速や打球速度アップに大きな役割を果たす。
〇船木永登(ふなき・ひさのり)1988年4月29日、東京都国分寺市生まれ。小学3年生で野球始める。投手として仙台育英高、関東学院大でプレー。仙台育英高の1学年下の後輩に元ヤクルト・由規投手、2学年下に巨人・橋本到2軍打撃コーチがいる。現在は株式会社SSLの代表取締役を務め、都内2か所でジムを運営。
(間淳 / Jun Aida)
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