「練習場所がない」…翻弄された“小学生の甲子園” 遠征組の苦境「感覚的に厳しい」
台風接近で順延の影響受けた「全日本学童大会」…2日間練習できないチームも
遠征で大会に出場するチームにとって、荒天などでの日程順延は頭の痛い問題だ。神宮球場など東京都内7会場を舞台に開催されている、47都道府県を代表する学童野球チームが頂点を争う「高円宮杯 第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」は、台風によって出ばなをくじかれた格好となった。
今月15日の夕方5時から神宮球場で開会式を行ったあと、本来であれば翌16日に1回戦が行われるはずだったが、台風7号接近の影響により、15日のうちに1日順延が発表された。これに慌てたのが、地方からの遠征チームだ。15日は午前中から東京への移動に費やされ、体を動かす時間はなかった。16日も練習できないとなれば、丸2日間も打撃練習などの最終調整ができなくなるため、チームスタッフや保護者は、室内練習場などの確保に追われた。
小名浜少年野球教室(福島)は、15日の午前9時から移動し、開会式に参加。16日は室内練習場が取れず、ホテル内で体を動かす程度しかできなかったという。迎えた17日の初戦は不動パイレーツ(東京第2)に3-15で敗れた。小和口有久監督は「そればっかりが理由じゃないけど……」と前置きした上で、「打撃練習を2日間してないのは感覚的に厳しいね。地元有利というのはあると思いますよ」と肩を落とした。
国分小軟式野球スポーツ少年団(鹿児島)は、2回戦から登場ということもあり、16日にグラウンドを押さえていたというが、台風で使用不可となった。末松正純監督は「17日は練習をするところがありませんでした。宿舎から(試合会場の)大田スタジアムまでが近かったのですが、もちろん投げたり打ったりはできないので、周辺を軽く走るぐらいでしたね」と振り返る。チームは18日、船橋フェニックス(東京第1)に6回無安打に抑えられ、0-13で敗れた。
施設が借りられないのであればと、バッティングセンターを利用したチームもある。岩見沢学童野球クラブ(北海道南)の小松連史監督は、「子どもたちがホテルで暇を持て余しているよりはいいかなと思って」と、16日は、台風の影響のない時間帯に明治神宮外苑にあるバッティングドームへ出向き、プロ投手のバーチャル映像を相手に、1人20球を7セット、計140球を打ち込んだ。その成果もあってか、翌17日の初戦、高知リトルキングドリームスを相手に21得点と打ちまくり、創部2年目にして全国1勝を挙げた。
「1つ休んでしまうと、なかなか集中して試合に入れない」
対して、宿泊を伴わずに通うことのできる首都圏や関東圏のチームはどうだったか。平戸イーグルス(神奈川)は、17日午前8時30分からの第1試合に備え、16日は午前7時から室内練習場で2時間程度練習。初戦当日も、午前5時40分に横浜市内のグラウンドでウオームアップを済ませてから大田スタジアム入りした。
中村大伸監督は「1つ休んでしまうと、子どもなので、なかなか集中して試合に入ることができないかなと思って(16日は)練習しました」と意図を説明。試合も中泉クラブスポーツ少年団(静岡)を相手に11得点を奪い快勝した。
全日本学童軟式野球大会は1981年に第1回大会が開催され、東京や大阪、静岡、滋賀、岐阜などで行われた後、1990年の第10回大会から茨城開催に固定。2009年の第29回大会からは東京開催となった(2021年は東京五輪のため新潟開催)。そして、東京固定は今回で一区切りとなり、2025年は新潟で開催することが決定している。開催都市が変わっていくことで、全国約1万チームから予選を勝ち抜いた代表の大会マネジメントも、また変わってきそうだ。
(内田勝治 / Katsuharu Uchida)
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