逸材下級生がいても「上には上げない」 結束乱さない、“完全学年別”チーム編成
創部53年で全日本学童大会初出場…埼玉・山野ガッツは部員88人の大所帯
埼玉県越谷市に完全学年別のチーム編成を敷き、悲願の全国切符を勝ち取った学童チームがある。1971年創部の山野(さんや)ガッツは、超攻撃野球を掲げ、全国から全51チームが参加する“小学生の甲子園”「高円宮杯 第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」への初出場を果たした。県大会6試合で実に99得点、チーム打率.479、20本塁打と、重量打線の看板に偽りはない。瀬端哲也監督は、自慢の教え子たちに目を細める。
「今年は大きい子も多く、長打が打てる選手は多いかもしれないですね。(打撃指導は)強く振ることだけですよ。大切なのは打席で怖がらないことです。いいボールは1発で仕留める。そのためには、日頃の練習で素振りも1球1球大事に、打撃練習でコーチが投げてくれる球もおろそかにしないということですね」
山野ガッツは、6、5、4年生と3年生以下の4チームが、それぞれ単独で活動しており、マクドナルド・トーナメントには6年生15人で挑んだ。学年別で練習や試合を行うのは、チーム運営において珍しいことではないが、レベルの高い5年生はトップチームに合流するなど、完全にすみ分けしていない場合が多い。ただ、瀬端監督は「ウチはスーパースターがいても、上のチームには上げないです」と断言する。
「学年別に分けることで、間違いなく結束力が高まります。ただ、下の学年から上に上げてしまうと、チームワークが乱れます。4年ほど前から取り入れてやっていますが、それだけは一貫しています。6年生が8人しかいなかったらしょうがないですが、今、4年生以上は各学年15人以上そろっているので、人数がいる間は、このシステムを続けていこうと思っています」
監督は2か年計画で育成…「10点取られたら11点取って勝とう」
学年の垣根を越えた競争が存在しないので、低学年のうちからレベルに合わせた実戦経験を積める。その上で、1人の監督が5年生→6年生と2年間指導し、再び5年生チームに降りるシステムにしており、2か年計画でじっくりと育成できるのも大きな利点だ。特徴的なチーム運営が評判を呼び、今では全学年で88人の部員を抱える大所帯となった。
「それぞれの学年で試合ができるので、下の学年も『人数を集めなきゃ』という意識が芽生えて、3、4年生ぐらいになると20人ぐらいになっています。それでいい流れができている感じはありますね」
マクドナルド・トーナメントでは、寒河江ジュニアベースボールクラブ(山形)との初戦で14点を奪い、うれしい初勝利。2回戦で新家スターズ(大阪)に7-10で敗れたが、前年度優勝チームを相手に互角の乱打戦を演じ、金星にあと一歩のところまで迫った。来年からは5年生チームを率いることになる瀬端監督は、2年後に再び全国の舞台を目指す。
「ウチは10点取られたら11点取って勝とうというスタイル。また今年と似たようなチームを作って、もう一回来たいですね」
埼玉県勢は準優勝が過去3度あるが、優勝はまだない。今回の6年生の活躍に刺激された5年生以下が、さらなる強力打線を形成し、今度こそ頂点へと駆け上がる。
(内田勝治 / Katsuharu Uchida)
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