活動は週末だけ…制約あっても全国強豪のワケ 「遠くに飛ばす」打線築く“方程式”

準決勝で2ランを放った不動パイレーツ・細谷直生【写真:加治屋友輝】
準決勝で2ランを放った不動パイレーツ・細谷直生【写真:加治屋友輝】

マクドナルドT3位の不動パイレーツ・鎌瀬慎吾監督は“ぶん投げ型”で考える力養成

 土日・祝日しか活動できないからこそ、週末2日間でどうすればベストパフォーマンスができるのか、各々が考えながら野球に取り組んでいる学童チームがある。不動パイレーツは、東京1051チームの第2代表として5度目の出場を果たした“小学生の甲子園”「高円宮賜杯 第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」で、昨年の準優勝に続き3位となった。

 都心の目黒区を中心に活動しているため、専用グラウンドはない。小学校の校庭も、使用時間は限られている。それでも安定した強さを誇るのはなぜだろうか。鎌瀬慎吾監督が、その秘密を明かしてくれた。

「個々にある程度任せているというか、あまり技術的な指導はしていません。打撃に関しては『遠くに飛ばしたかったらどうするの?』と、それだけしか言わないようにしています。そうすると、子どもたちは自分の中で、いい形を見つけてくれると思っています」

 週末の活動は、主に対外試合で力を試す場になるため、個々の裁量に任せている平日の練習が大切となる。ただ、指導者が全員の家を訪ねて練習を見ることは、もちろんできない。それならばと、例えば「遠くに飛ばす」にはどうしたらいいかを考えさせ、その答えを導く“方程式”を見つけることを、毎週の課題としている。

「子どもたちって感覚が鋭いと思っていて、あまり型にはめないようにしています。流行りのアッパースイングがいい子がいれば、実は上から叩いた方がいいという子もいるだろうし、それぞれ体の使い方も違うじゃないですか。自分がこれまで得た知識の引き出しはあげるから、どれが一番いいか自分たちで考えてという、割と“ぶん投げ型”の指導ですね(笑)」

ハイタッチで試合に臨む不動パイレーツナイン【写真:内田勝治】
ハイタッチで試合に臨む不動パイレーツナイン【写真:内田勝治】

「余計なことをするな」と言われた高校時代…“諦めさせない”指導を徹底

 鎌瀬監督は高校時代、「打撃を期待されていないタイプの投手」で、投球に専念するため、打席内では「余計なことをするな」と指導者に言われたこともあるという。ただ、子どもたちは無限の可能性を秘めている。早い段階で型にはめ込むより、積極的に振ってくる打者の方が投げづらいという自身の投手的視点から、まずは遠くへ飛ばすことを“諦めさせない”指導を徹底している。

 42歳の若き指揮官の下、子どもたちも伸び伸びとプレーしている。マクドナルド・トーナメントでは、試合前にスタメンがアナウンスされると、ベンチから勢いよく飛び出て、先に呼ばれた選手たちとハイタッチを交わす。昨年の6年生が同じ舞台で行っていた“儀式”を、1年ぶりに解禁し、1回戦の小名浜少年野球教室(福島)では、初回にいきなり5点を奪い波に乗った。

「いつもはスロースタートのチームなんですけどね(笑)。去年のメンバーがやっているのを見て『自分たちもやりたい』となったので、『地方大会はアナウンスがないから、全国に行ったらやっていいよ』と約束しました。基本的には子どもたちなので、乗せてあげるのも、私たち指導者の仕事です」

 1から10まで教えることが指導ではない。ある程度の“余白”を残し、子どもたちの考える力を引き出してあげるのも、指導者の大切な役割だ。自ら考え、実践できる選手がそろっているからこそ、不動パイレーツは激戦区の東京で結果を出し続けることができる。

(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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