指導者は「教えない勇気も必要」 10年ぶり中学野球復帰、鍛治舎監督が感じる“気質変化”
中学硬式名門・枚方ボーイズ監督に復帰…選手は“頑張り方”が「わかっていない」
子どもたちの成長に必要なことは何か? 指導者にも時代や選手の気質に合わせた“引き出し”の多さが求められている。県岐阜商(岐阜)を退任し、中学硬式野球の大阪・枚方ボーイズに復帰した鍛治舎巧監督。アマチュア球界で数々の実績を残してきた名将は「野球は根性じゃないサイエンス」と、数値や理論に基づき選手たちをサポートしている。
10年ぶりに中学野球界に戻ってきた鍛治舎監督の目は鋭さを増していた。古巣の第一印象を問われると「10年前とやっている野球は変わらないが、努力の次元が違うかな?」と苦笑いを浮かべた。打撃、守備、走塁など練習メニューは変わらないが、子どもたちの気質の変化は感じている。
「当時に比べると真面目で素直。技術も格段に上がっていますが、どれだけ頑張ればいいかをわかっていないと思います。言い方は悪いかもしれませんが、プレーが軽かったり責任感や使命感が足りない。仲良しクラブではダメなんです」
だからこそ、指導者に求められるものは高い。子どもたちの自主性や主体性を育むためには何が必要なのか。感覚的な指導がまかり通っていた時代はとうに過ぎ去った。技術や理論が進化し、簡単に情報が得られる時代だからこそ、指導者は多くの引き出しが必要になると考えている。
高校野球ではPDCAサイクルを導入「小さな成功体験を積み重ねることで自信が生まれる」
「いくら知識があっても、なかなか子どもたちは上手くいかない。その時に教えるではなく、寄り添う、支えることが大事。指導者はアドバイザー。コーチには『教えない勇気も必要』と伝えています。一定期間は見守り、壁に当たった時にいい方向に向かう選択肢を与えてあげる。その子にとって何が一番いい形なのかを考えないといけない」
鍛治舎監督は秀岳館(熊本)、県岐阜商時代にPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の「PDCAサイクル」を導入。「小さな成功体験を積み重ねることで、自信が生まれてくる。できないことを言うのではなく、できたことを褒める。それは高校野球で学びました」。技術や理論を学ぶ一方で、選手たちの運動能力を数値化し、具体的な目標設定を行い、個々の成長に繋げていった。
枚方ボーイズに復帰し2か月が経ち、鍛治舎監督の指導は浸透しつつある。基本的にチームの練習は土日がメイン。ライバルに打ち勝つため、個々の能力を高めるには平日の自主練でどれだけ追い込めるか。子どもたちに伝えたいのは「自ら行動を起こすこと」の重要性だ。
「エンジョイベースボールは大歓迎。ただ、野球を含めスポーツは厳しさを乗り越えたところに喜びがある」
長きにわたり野球界を支えてきた鍛治舎監督。これまで培った経験を還元し、高校、大学で通用する選手たちを育成していく。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)
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