集中力欠ける低学年…「投げ方」のコツをどう伝える? 球速も制球も上がる“肩動作”
“投手経験”はほぼ全員に…仙台市・七郷少年野球クラブの投動作指導は「短い言葉で」
創設53年の歴史をもつ宮城県仙台市の少年野球チーム「七郷少年野球クラブ」は現在、2年前と比較すると3倍近く増えた51人の部員を抱えている。そのうち小学校4年生以下の「育成・キッズ年代」は40人近く在籍。同年代を指導する亀浦優佑監督は、全員になるべく均等に試合の出場機会を与え、将来を見据えてさまざまなポジションを守らせている。中でもほぼ「必須」になっているのが投手だ。投げ方指導のポイントを聞いた。
「ピッチャーのプレーには野球の楽しさも、野球の基本もすべて入っている。ピッチャーの動きはほかのポジションにもつながる。1人で乗り越えなければならない場面もあるポジションでもあるので、メンタル面も鍛えられます」
亀浦監督は投手を経験させる目的をそう説明する。とはいえ、投手は誰でもできるポジションではない。特に小学校低学年はストライクゾーンに投げるのも一苦労だ。
そこで力を入れているのが、「肩の入れ替え」を意識した投げ方の指導。体の軸を中心に、ボールを握る後ろの肩(右投げなら右肩)とグラブを抱える前の肩(左肩)とを素早く“入れ替える”イメージで投げることだ。亀浦監督は投球動作指導の視察のために近畿地方のチームを訪ねた際、低学年選手の投手力の高さに衝撃を受けた。その指導ノウハウを持ち帰り、参考にしている。左右の肩の入れ替えがスムーズにできると制球力が向上し、入れ替えのスピードが増すと球速も伸びるという。
これを低学年年代に分かりやすく伝えるため、キャッチボールの際、選手の足元から投げる方向に石灰で直線を引く。投げる前に直線と平行に両手を広げさせ、「線に沿って真っすぐ」などと簡潔に指示を送る。亀浦監督はこの「可視化」と「簡潔な指示」の意図について、「左右の理解ができない子、集中力が1分と持たない子もいるので、1回で覚えさせようとせず、動作を見せながら短い言葉で説明するよう心がけています」と話す。
年間試合数5倍増…“専属”監督誕生で部員増でも出場機会確保
塁間のキャッチボールがある程度できるようになると、「育成」の試合で登板する機会が巡ってくる。今年の4年生以下は14人が実戦のマウンドを経験した。
そもそも部員数が増えると、選手1人1人に出場機会を与えるのが難しくなるようにも思われるが、年間の試合数を以前の5倍以上に増やすことで懸念を払拭した。中でも、4年生以下の試合数を増やせるようになったのは亀浦監督が就任してからだ。
以前は育成・キッズ年代の専属の指導者がおらず、分かれて活動することができなかったため、練習日以外は高学年の応援がメインだった。低学年が大会に出場するのは「季節に1回」程度だったという。
亀浦監督が専属で指導し始めた2022年1月からは「練習より試合の方が野球を覚えられる」との考えで試合数を増やし、4年生以下の「育成」は年間30試合以上、3年生以下の「キッズ」は年間50試合以上を戦っている。中には3年生が「育成」、4年生が「ルーキー」(5年生以下)の試合に「飛び級」で出場するケースもある。
「練習は試合のためにしています。練習はやるけれど試合には出ませんとなると、どれだけできるようになったか測れない。子どももボールに触れる機会やバットを振る機会があった方が、刺激になると思います」と亀浦監督。多くの部員を抱えるからこそ、低学年のうちから経験を積ませることが「野球を続ける環境づくり」の一環になる。
(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)
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