12球団Jr.最優秀小学生が「チーム無所属」のワケ 料理人父と磨いた“本気の二刀流”

福岡ソフトバンクジュニアの平井秀虎【写真:加治屋友輝】
福岡ソフトバンクジュニアの平井秀虎【写真:加治屋友輝】

“プロの登竜門”でMVP…ホークスジュニアの平井秀虎は「大谷選手のように」

 親子で試行錯誤しながら磨き上げた野球の技術が、“プロの登竜門”と呼ばれる大舞台で結実した。全国の逸材小学生がプロ野球と同じユニホームを着用して戦う「NPB12球団ジュニアトーナメントKONAMI CUP2024〜第20回記念大会〜」は、12月26日から29日までの4日間、神宮球場とベルーナドームを舞台に行われ、福岡ソフトバンクホークスジュニアの15年ぶり2回目の優勝で幕を閉じた。最優秀選手には、平井秀虎(ひでと)選手(6年)が輝いた。

 レベルの高い選手が目白押しのソフトバンクジュニアの中でも、ピカイチの存在だった。平井くんは今大会、投手としては1戦目(26日の阪神ジュニア戦)と決勝(29日の北海道日本ハムジュニア戦)の先発を任され、いずれも試合をつくり、打っても同点で7回タイブレークにもつれ込んだ2戦目(27日の東京ヤクルトジュニア戦)に、値千金の代打決勝3ランを放った。

「将来は大谷翔平選手のように、どちらもできる選手になりたいです」という言葉も、平井くんが言うと、単なる夢物語には聞こえない。

 帆足和幸監督は「決勝の先発を任せたのは、彼が自分から『決勝で投げさせてほしい』と言ってきたからです。その気持ちを買いました」と明かす。平井くんは「自信はあったので」と事もなげだが、一方で、2回に四死球を与えて無死一、二塁のピンチを背負いながら、遊ゴロ併殺に仕留めて先制点を許さなかった場面を振り返り、「後ろの守備が助けてくれました」と好守の遊撃手・山崎海和主将(6年)らに感謝した。

 今大会に出場した16チームはそれぞれ、動画による選考や実地の入団テストを経て、選りすぐりの小学生を集めた期間限定のエリート集団だ。各選手は普段、それぞれの所属チームでプレーしているわけだが、今大会出場選手中、平井くんだけは「無所属」となっている。4歳で野球を始めてから、過去に3度チームに所属したことがあるが、いずれもやめた。その代わり、フランス料理人の父・智成さんと福岡県内の公園でキャッチボールや、ゴムボールを使っての打撃練習などを日課にしてきた。

東京ヤクルトジュニア戦では値千金の決勝3ランを放った【写真:加治屋友輝】
東京ヤクルトジュニア戦では値千金の決勝3ランを放った【写真:加治屋友輝】

ついに見つけた居心地の良いチーム「みんながよくしてくれて楽しかった」

 智成さん自身は、本格的に野球に取り組んだ経験のない“素人”だったが、独学でトレーニング方法、体の動かし方、ケア術、栄養学などを勉強し、平井くんをサポートしている。動画サイトを教材にして、専門家にダイレクトメッセージで質問をぶつけることもある。

 こうして、本気で子どもと一緒に取り組むのが智成さんのスタイル。平井くんの5歳上の兄が、東大合格者ランキングトップの常連校である兵庫・灘高校の受験を志した際には、智成さんも睡眠時間を削って一緒に受験勉強に取り組み、わからないところがあると中学生、小学生レベルまで戻って勉強し直して、合格までサポートしたという。

 智成さんは、平井くんのチーム選びにも積極的に関わってきた。真夏の試合で酷使されて体調を崩したことなどから、智成さんの判断で退団させたケースもあるという。智成さんは「いろいろありましたが、本人は最近では『いろいろなチームで、いろいろな人と野球をやれて勉強になった』と言っています」と前向きにとらえている。

 そんな平井くんにとって、今年8月末に結成されたソフトバンクジュニアは、レベル的にも、雰囲気的にも、一番居心地が良かったようだ。「みんなのレベルが高くて、みんながよくしてくれて、楽しかったです。みんな元気がよくて、盛り上げてくれました」とうなずく。ちなみに、チーム内での呼び名は“秀ちゃん”だという。

 智成さんも「ソフトバンクジュニアの子どもたちは、技術レベルが高いのはもちろんですが、みんな謙虚で向上心が高いです」と評し、「私が練習を見学していると、他の選手から『どうして秀虎くんの打球はあんなに飛ぶのですか?』と聞かれることもあります」と語る。

 平井くんは2025年、中学進学とともに硬式野球チームに入団する予定。自分に合った場所で、類まれな潜在能力を存分に伸ばしてほしいものだ。もちろん、平井くんが父親と二人三脚で築いてきた自分の“幹”の部分を忘れることは、生涯ないだろう。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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