田中将大が助言、チェンジアップは「まず腕振り緩めて」 勝負球を操る“指のかけ位置”
日米通算197勝の田中が中学生にデータ活用方法&投球技術を指南
目に見える数値で「動き」を分析し、技術を改善できれば、パフォーマンスは一気に向上する可能性がある。日米通算197勝で、巨人入団が発表された田中将大投手は、12月8日、東京都内で行われたピッチング直接指導企画「マー君ラボ2024 supported by ミズノ」に参加。中学生を対象に最新計測機器を用いてデータを見ながら指導を行い、少年野球でも取り入れられるデータ活用のメリットや、投球技術のポイントを伝えた。
野球の指導でよく使われる感覚的な言葉を可視化、または数値化する動きは今、プロアマ問わずに多くの現場で広まりつつある。中学生3年生を対象とした直接指導を通して、田中はその活用について言及した。
「中学生だと『データ』に触れる機会はそんなにないと思うし、そこだけの話になってはいけないと思いますが、(ピッチングにおいて)評価はしやすいもの。変化球を投げてみて『イマイチかな……』と思っても、数値を見れば『変化はしているよ』となる。指導の話はしやすくなると思います」
イベント内で田中は投球時の踏み出す足の位置やテークバックの作り方、ボールの握り方など、細かな技術指導を行った。中学生との質疑応答では、「ボールが抜ける時は、どう修正したらいいですか?」と質問される場面も。「人それぞれ特性がある」と前置きしながらもこう語りかけた。
「僕の場合は、できるだけ右足(後ろ足)のほうに体重を残したまま、着地してから投げる。実際にはそうなっていないけど、意識としては右足のほうに『溜めて投げる』イメージ」
「ボールの扱いが上手」な中学生にも響いた技術指導
データ分析と技術指導に、参加した中学生たちは納得の表情を浮かべる。そこには、この日のブルペンで146キロの球速を叩き出した投手がいた。中学生の投球レベルに驚きつつ、田中は言う。
「素晴らしいですね。参加してくれた子たちの中にも球が速い、遅いはあるかもしれないですけど、最初のキャッチボールの時点で、みんなボールの扱い方が上手だなとは思いましたね」
高いポテンシャルを見せた都内のボーイズリーグに所属する選手は、スクワットなど日々のトレーニングを繰り返して球速が一気に伸びたという。田中の直接指導では、ストレートのリリース時の右手首の角度を教えてもらい、実際にボールの縦回転角度の数値が変わったことを目の当たりにした。その選手は、こう語った。
「感覚ではわかりませんでしたが、データが変わっていたので良くなっているのを実感しました。伸びのあるボールを投げていきたいので、これからも“角度”を意識して投げていきたい」
もともと苦手な球種だったチェンジアップの指導も、田中から受けた。「人差し指をボールの縫い目にかけて投げる」こと。チェンジアップの意識としては、ストレートと同じように思い切り腕を振ることを教わるものだが、「チェンジアップを投げる」意識を強く持って投げてみる。ボールを“置き”にいく、つまり、やや腕の振りを緩めてもいいという。「そこからだんだんとレベルを上げていって、最終的にはストレートの腕の振りと同じように投げられるようになろうと教わりました」。
データ分析と細かな技術指導で「自信になった」。どちらかに偏ることなく、バランスの取れた指導は、中学生を含めた若年層にとっても大きな成長につながるのだろう。
(佐々木亨 / Toru Sasaki)
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